出版社内容情報
中国文明エジプト起源説、地下世界論、暗号論、作曲コンピュータや幻灯器の発明など、ルネサンス最大の幻想的科学者の奇怪で膨大な業績を140点余のオリジナル図版で紹介。澁澤龍彦、中野美代子、荒俣宏の附論付き。
■目次より
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
兎乃
20
不眠の夜に、再読。ネルヴァルが『オーレリア』第一部第4章の地下世界描写の際に、キルヒャーの『地下世界』を参考にしたという説がある。ゴドウィンは英国出身の音楽理論研究者で、本書において"エジプトのオイディプス"と"地下世界"の図版を多数収録し、両作品の解釈に力点を置いている。17世紀最大の幻想的科学者キルヒャーの世界に浸りながら、「オーレリア」を読むのはなかなか面白いと思う。澁澤龍彦氏の解説も嬉しい。→2013/01/24
田氏
14
寄稿陣に澁澤龍彦、中野美代子、荒俣宏の名が連なっている時点で、いい意味でお察しである。アタナシウス・キルヒャー、長らく等閑視されていた17世紀の知の巨人。その著作は博学もさることながら視覚的要素に富んでいて、アルケミー嗜好のいかんを問わず挿絵だけ眺めても楽しい。記述そのものは、そりゃ今となっては色々とアレだけど、今の知識と価値観で過去を裁くのはナンセンスだ。当時の技術や知識において、この綺想を成した事実に敬服すべし。とはいっても、知の1.6m級巨人すなわち凡人である私にはチンプンカンプンで流し読みである。2019/11/29
左手爆弾
5
キルヒャーについての体系的な記述ではないが、彼自身が作らせた多くの挿絵もあって、楽しく読める。17世紀は科学、実証的な科学に近しい科学が花開いた世紀である。その中で、キルヒャーの魔術的な自然学、聖書やヘルメス文書頼りの歴史学や地理学はいかにも時代遅れのように見える。しかし、たとえ実証的には十分でなくとも、世界中のイエズス会士のネットワークを利用し、図版を利用する教育的な配慮も込めた独自の博物学を展開した。音楽についての説明がもっと読みたかったが、それは『普遍音楽』を読むべきか。2018/01/04
misui
5
デカルトも関心を持ったという知識人・アタナシウス・キルヒャー(1601-1680)を豊富な図版とともに紹介する。キリスト教の立場から多岐に渡る分野の物事を研究し、その業績は後世に多大な影響を与えた。澁澤龍彦『高丘親王航海記』の表紙絵の人です。2012/02/07
Meroe
5
遅れてきたあるいは早すぎた万能の人、キルヒャーの人と仕事をたくさんの図版とともに紹介。ノアの方舟、バベルの塔、古代の世界、中国、エジプトと神聖文字、音楽、魔術とシンボル、そして地下世界……見たことないようなイメージであふれている。キルヒャーは、あらゆる言語、宗教に共通するような「全体」と「始原」を追い求めつつ、それでもなお、そこから漏れるようなものにも惹かれつづけた。一家に一冊。2011/12/04