内容説明
鹿児島の中学社会科教師が、神格化された郷土の英雄の「虚像」を排し、「実像」を考える!
目次
1 西郷隆盛の“聖地”を歩く
2 奄美と西郷
3 征韓論と遣韓論の間で揺れる西郷像
4 西南戦争の大義名分は「西郷暗殺計画」だった
5 民衆の側からみた西南戦争
6 「西郷隆盛」を子どもにどう教えるか
著者等紹介
山元研二[ヤマモトケンジ]
1964年、鹿児島県種子島に生まれる。立命館大学文学部史学科日本史専攻卒業、鹿児島大学大学院教育学研究科教科教育専攻社会科教育専修修了。1987年より鹿児島県公立中学校の社会科教師となり現在に至る。人権教育、平和教育、法教育、郷土教育を研究テーマとしている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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makimakimasa
10
城山ホテル滞在中に読了。神格化された西郷(平民の士族意識の上昇・同化が原因?)を偉人から解放する試みの本。不平士族を慮る余り、奄美(かつて「毛唐人」「気持ち悪い」とまで発言)に対する黒糖収奪維持を画策したり、征韓(鹿児島では遣韓論が幅を利かせている)の代わりに台湾出兵に動いた西郷。私学校派の政府密偵への弾圧は家族にも及び、西南戦争における各地の焼き払いや略奪、住民や捕虜の殺害も酷い。重野安繹の西郷評—豪傑肌だが度量は狭い、人と艱苦を共にするのが持ち前、一旦敵と見た者はどこまでも憎む、がしっくりくる。2022/05/14
ココアにんにく
4
大島商社や西南戦争での焼き払いは初めて知りました。幕末~明治を江戸や京都の視点ではなく、薩摩そして奄美の視点からだと、見える景色が違ってくる。2020/01/10
てり
1
「翔ぶが如く」を読んだが、西郷のイメージがいまいちつかみ切れなかった。違った視点からの西郷像を求めて手に取る。著者は、鹿児島県下で神格化された西郷が、偉人として道徳の教科書に取り上げられていることに異を唱える。左翼系と推察される教育者としての主張はわかる。が、自分が求めていたモノではなかったかな。2020/09/19
UP
1
薩摩という「尊皇思想の上で維新を成し遂げた武の国」で、西郷はしがらみなく弱きものの立場に立つ政を目指す「農本主義」を基本とした、この二つの通奏低音が流れる西郷隆盛という人間だからこそ、右翼にも左翼にも偉人として崇められる人物に祭り上げられたという指摘は興味深い。お膝元鹿児島の社会科教師が陰謀論ではなく史料から西郷隆盛のイメージを突き動かす試みで、大河の西郷どんのイメージが抜けきらない人にとっては新たな視点をくれる。奄美の黒糖地獄や西南戦争時の熊本での略奪など、見なければならない点は多い。2020/02/01