内容説明
帝国主義を「盗賊主義」と批判し、晩年には「軍備撤廃論」「反軍国主義」を主唱した外交官がいた!思想家中江兆民に学び、「坂の上の雲」の主人公秋山好古や「平民宰相」原敬の親友・叔父として正岡子規のめんどうをみた拓川・加藤恒忠の本格評伝。
目次
1 拓川加藤恒忠の生い立ち
2 中江兆民の仏学塾に学ぶ
3 外交官人生―帝国主義の狭間で
4 日清・日露戦争期の拓川とその知友
5 保護国韓国を巡って―「盗賊主義」に我慢ならず
6 新聞記者・代議士・貴族院議員時代
7 シベリア派遣全権大使として
8 松山市長の九カ月
著者等紹介
成澤榮壽[ナルサワエイジュ]
1934年、東京に生まれる。62年、早稲田大学大学院文学研究科(史学専攻)修士課程修了(西岡虎之助先生に師事)。専門は日本近代史。同年、東京立正高等学校勤務を皮切りとした教員生活は、2000年、長野県短期大学長の退任をもって終止符を打つ。現在、部落問題研究所理事長、全国公立短期大学協会顧問(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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勝浩1958
1
拓川加藤恒忠は師中江兆民の思想自由・平等論を学び、大学では生涯の親友となった原敬、陸羯南と共に放校処分になった。また、正岡子規の叔父であり、秋山好古や西園寺公望とも終生交流があった。とくに、好古とは気心の知れた飲み友達であった。主人公を取り巻く人々の動静を語りながら、明治・大正の時代の歴史的事件をも簡潔に要約していて、この時代に興味を持つ私を十分満足させてくれた。2013/02/11
kozawa
0
本書が最も見所としたかったであろう点、1905年条約で大韓帝国の外交権を日本が実質握った時期の赤十字の国際会議にて、これに日本の外交官として参加した加藤恒忠(拓川)は少なくとも形式上は韓国のそれも代行する立場にあったものを、形式上の扱いすら守ろうとしない伊藤博文等当時の政府上層部に喧嘩を売ったとしている。当時についてのこの類の「問題」は今では色々明らかになっているけれども扱いが正当かどうかははてさて(本書が指摘したい問題も歴史の「全体」から見てどれほど重要かは難しい問題だし評価は割れるだろう)2012/12/30