内容説明
カスピ海と黒海に狭まれた広さ岩手県ほどのチェチェン共和国。大国ロシアはなぜここに侵攻し、チェチェン民族の抵抗はなぜ続くのか。厳戒のチェチェン潜入ルポとウォッチャーの考察による、チェチェン問題理解のための入門書。
目次
１章 なぜチェチェンで「戦争」は続くのか
２章 モスクワ劇場占拠事件―知られざる当事者の肉声
３章 チェチェンで続いている拷問、虐殺、処刑
４章 忘れえぬ人々―現代チェチェン人群像
５章 ジャーナリストの誕生
６章 チェチェン戦争の諸相
７章 何のための苦しみか―チェチェンが示す２１世紀の黙示録
著者等紹介
林克明［ハヤシマサアキ］
１９６０年、長野県生まれ。ノンフィクション・ライター。環境問題をはじめ、社会問題を主なテーマとする。１９９５年から１年１０ヵ月間、モスクワに住みチェチェン戦争を取材する。２００１年、「ジゃーナリストの誕生」で第９回週刊金曜日ルポルタージュ大賞を受賞
大富亮［オオトミアキラ］
１９７６年、神奈川県生まれ。チェチェンニュース編集兼発行人。大学卒業後、人道支援関連のＮＧＯに勤務。１９９９年に第二次チェチェン戦争が始まり、広報などを担当する。それがきっかけになってチェチェン問題に関心を持ち、情報収集を続ける。２００１年からＥメールによるニュースレター、チェチェンニュースを発行している
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感想・レビュー
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うえ
10
「１９９９年９月２３日、ロシア軍機がチェチェンに空爆し、第二次チェチェン戦争が始まった。それ以来…ロシア軍による市民への攻撃や、人権抑圧が続いている…「掃討作戦」である。これは、ロシア側が「テロリストを匿っている」と判断した村落を包囲し、住民のうちから１０歳から６０歳にいたる男性をすべて拘束して尋問を加え…収容所に収容して尋問と拷問にかけ、場合によっては逮捕者の多数を殺害する」「世界は「アッラー・アクバル（神は偉大なり）」と、「ゴッド・ブレス・アメリカ」という、巨大な二元論に組み込まれようとしている」2017/11/24
非日常口
9
シリア情勢から周辺国の状況としてコーカサスに。交通の要所に位置するコーカサスは「白い雪」という意味らしい。ロシアが攻め込みそれに抵抗するも、９１１テロに便乗したロシア軍に抵抗するチェチェンに対して国際テロリストと断定。日本ではほとんど気にもとめられず、国際社会も敬遠する民族絶滅地域の貴重な取材レポート。2013/09/17
Marcel Proust
7
2022年のロシアによるウクライナ侵略戦争を起こした戦争犯罪者・プーチンの原型がチェチェン戦争にある。出身母体の諜報機関による自作自演の偽装テロにより、チェチェンへの侵略戦争は開始された。現在もウクライナで繰り広げられる戦争犯罪・虐殺の惨さは、20年前のチェチェンでも凄惨に繰り広げられていた。911事件後の「チェチェン人＝テロリスト」というプーチンのプロパガンダは、この本を読めば粉々に粉砕される。著者の林克明は体を張ってロシアとプーチン政権の闇を暴き続けているが、もっと著書を世間に読まれるべきだと思う。2023/10/11
at-sushi@進め進め魂ごと
6
ロシア軍による青壮年の拉致、拷問、身代金要求、村落の集団虐殺etc、「紛争」という名に矮小化された「民族浄化」に抵抗する人々は銃を取り、イスラム過激派まで介入しテロの惨禍が吹き荒れる、「未亡旅団」に描かれた10年前の惨状はガチでしたorz プーチン政権確立のための実績作りという大義無き戦争のため、国策テロによる世論操作やジャーナリストの抹殺までやってのける彼の国の闇の深さに慄然とする。汚職や舌禍事件が関の山の我が国のボンボン政治家がどんだけ交渉しようが、北方領土など１㎠も取り返せんだろうな。 2015/12/06
スズツキ
5
地域専門家やジャーナリストは特定勢力に極度に肩入れする傾向が強い。さらに突然関係ない国に飛び火するのは、専門の情報の信頼度すら下落してしまうからなぁ。ちなみに作中に名前の挙がる二人の人物はその後暗殺され、大ニュースになった。2015/12/04
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