出版社内容情報
障害、性別、年齢、人種、宗教などの少数派である「マイノリティ」の中から、本書は「障害」を採りあげ、その世界の多様なリテラシーの視点から、教育と社会のあり方を考える。英語執筆者の原文は、WEBサイトにて配信予定。
本書のテーマは「多様なリテラシー」である。全編を通して「リテラシー」とは何かを考え,マイノリティ言語話者のリテラシーと社会参加を考える。以前は「マイノリティ」とは,在日コリアンや日系ブラジル人といった,いわゆる民族モデルを意味したが,現在は,障害,性別,年齢,人種,宗教,性的指向等にも同様に用いられている。本書では,特に「障害」を採りあげ,その世界の多様で,複雑,課題に満ちて,しかも豊かなリテラシーを見,教育と社会のあり方を考える。障害者施策,マイノリティ施策が大きく動きつつある現代にあって,障害当事者の声を出発点に,施策から教育現場までを考えたい。「障害=福祉の対象」ではなく,いきいきと自身の個性を生かしつつ社会に参加する,十全たる市民が育つことこそ,望まれる社会の姿であろう。そして,それは適切な教育のあり方,社会のあり方によって実現可能なはずである。(「序」より)
序 少数派のリテラシーと社会参加(佐々木 倫子)
◇ ◇
▼第1部 当事者が語る教育と社会の現実▼
第1章
ビジュアル・リテラシーの重要性
―1ディスレクシア当事者の声(神山 忠)
第2章
テクノロジーとリテラシーの多様性
―1ロービジョン当事者の声(森田 茂樹)
第3章
聴者の家庭に生まれた1ろう者の声(小野 広祐)
第4章
デフファミリーに生まれた1ろう者の声(川島 清)
第5章
モンスターの分析
―不確かな人類学とろうのスーパーヒーローの生い立ち(ヴァレンティ,ジョセフ M)
第6章
ろう者がろう者に聞く
―ろう学校でリテラシーは育成されたか(中山 慎一郎)
▼第2部 当事者と社会参加▼
第7章
当事者と非当事者(斉藤 道雄)
第8章
デフ・インタープリター入門(アダム,ロバート)
第9章
ろう児に対する教育政策
―障害児教育かマイノリティ言語教育か(岡 典栄)
▼第3部 社会のバリアフリー化と多様なリテラシー▼
第10章
情報のユニバーサルデザイン(あべ やすし)
第11章
ろう児のバイリンガル・リテラシーの育成(ガラテ,マリベル)
第12章
マイノリティと多様なリテラシー(佐々木 倫子)
◇ ◇
あとがき 当事者と非当事者の協働(佐々木 倫子)
索引
【著者紹介】
佐々木倫子(桜美林大学大学院 言語教育研究科)