内容説明
今日、家族をめぐる混乱(離婚や不婚の増加、少子化など)が先進諸国で生起しているが、このような状況をもたらしている社会的要因は一体何であろうか。著者は基本的にエンゲルスの『家族起源論』に拠りながらも、現代アメリカの文化人類学者M.ハリスの理論をも参照し、この問題の社会科学的解明を企図する。すなわち女子労働をはじめとして女性の社会的進出の気運が高まっているにもかかわらず、伝統的な家族秩序や社会の仕組みのなかにそれを阻む要因(家父長制の残滓)が存在することに、家族混乱状況の基本的な要因があるとみなす。そして「女子労働の発展と家父長制の止揚」という命題を掲げ、本問題の考察を試みるのである。増補版刊行の趣意は、本書初版で扱われなかったこの問題を補完することにある。
目次
第1篇 家族史研究と「種の繁殖」の命題(「種の繁殖」の命題に関する問題点;家族史研究と史的唯物論―青山・玉城論争を中心として ほか)
第2篇 エンゲルスの『家族起源論』と現代民族学(『家族起源論』の体系と「家族」の起源;原始乱交=集団婚説の批判的検討 ほか)
第3篇 補論(原始共同体に関する論争―B.マリノウスキー対R.ブリフォールト;近世自然法論と民族学―動物社会学的家族起源論 ほか)
第4篇 増補版補論(女子労働の発展と家父長制の止揚―エンゲルスの『家族起源論』の現代的意義;原始共同体の社会規範と「家と屋敷地」)
著者等紹介
江守五夫[エモリイツオ]
1929年、石川県金沢市に生まれる。1951年、東京大学法学部卒業。東京大学社会科学研究所助手、明治大学法学部教授、千葉大学人文学部教授(後、法経学部に配置換)、東京大学社会科学研究所併任教授(83~87年)、帝京大学文学部教授、東京家政大学文学部教授を歴任。現在、千葉大学名誉教授、法学博士、文学博士
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