目次
第1章 「成り上がり」の世紀と職業意識
第2章 銀行家たちのパリ
第3章 銀行家の躍進とジャン=フレデリック・ペレゴー
第4章 個人主義の相克と自由主義経済
第5章 反個人主義のイデオロギー
第6章 メセナと芸術家意識
第7章 銀行家たちの文化活動とロマン主義
第8章 「金銭」への馴化
第9章 “むすび”に代えて
著者等紹介
柏木治[カシワギオサム]
1956年、和歌山県生まれ。現在、関西大学文学部教授。専攻はフランス文学および文化論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ラウリスタ~
6
銀行家は、いわば貴族とブルジョワの間の存在。後者へと社会の主人公が移りゆく社会。精神的貴族性、卓越性(ディスタンクション)を求めて、絵画収集や慈善事業(ギリシャ独立運動、キリスト教、反奴隷)に参入する。数本の論文をまとめたもので、金、ロマン主義という共通点をもちつつ、様々な切り口から(銀行家に狭く限定されているわけではない)。「真の文学」を志し清貧に耐えていた若手作家から、金のための作家への転身(と書くとすごい悪そうだ)、ヴァレス、ゾラ、金の肯定化、あるいは反貧困。2020/09/21
seu
2
銀行家とロマン主義作家という一見対照的な二者の関係について論じた本。メセナやパトロンの庇護の下にあった18世紀までの作家と違い、19世紀のロマン主義作家はその高邁な理念とは裏腹に市場経済社会の動きと無縁でいられなかった「成り上がり」者であるという点で当時の銀行家と非常に関係が深い。歴史的に重要だがあまり引かれることのない実業家や思想家の言説の紹介に富んでいて参考になる。文芸における経済的視点の重要性は純化された文科学生(笑)時代はなかなか意識できなかったが、19世紀理解においては極めて重要な視点だと思う。2025/03/01