感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
冬薔薇
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図書館の棚を流し見ていて偶然この本の背表紙が目についた。初めての作家だが不思議と好きなジャンルの本は引くものがある。南北朝の時代、世の中の流れに翻弄される世阿弥の養子元重、長男元雅と妙花。猿楽を京の将軍のもとで大成させた観世座の後継問題。権力者の後見を得た者に観衆はなびくもの。能にふさわしい構成文章でまとめ上げられ、読後、能を見せてもらったようにズッシリ重みがある。亡霊の語る元雅と妙花の悲劇、観世一族の波乱の歴史、それを聞く旅の僧は秀吉の時代の能役者・七大夫であり、読者でもある。吉野に舞う桜を見たい。2011/09/21
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