出版社内容情報
7人に1人は、本当の死因がわからないまま焼かれている!
―死因究明のために日夜正義のメスを持つ司法解剖医の知られざる日常が明かされる―
ベールに包まれている、「司法解剖医」の素顔、日常、苦悩、死生観、死因究明の具体的な手法などを描く。
司法解剖医は、鳥取連続不審死事件など、一連の「犯罪見逃し事件」により、一躍注目を集めた。
現在、「死因究明法案」が提出され、世論の関心が高まっている。大反響の『焼かれる前に語れ』に続く第2弾、満を持して登場!
内容説明
不審死続出!なんと6人に1人が、本当の死因がわからないまま葬られている。壊れたニッポン社会と闘う、孤高の司法解剖医、衝撃のリアル。
目次
1章 解剖室で聴く最期の声(解剖室で慮ること;明日の毒殺 ほか)
2章 死者から学ぶこと(時津風部屋事件;年末年始に思う ほか)
3章 いくつもの死、いくつもの生(さまざまな死;恩師との出会い ほか)
4章 死を診る医学(自殺と他殺と自然死;出刃包丁での解剖 ほか)
5章 未来へ向かって(苦しんで死んだのか;「検視」を考える ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
更紗蝦
33
なんとなく自分がうっすら持っていた「法医学」というものに対するイメージが覆される本でした。制度面での不備もさることながら、職場環境も「危険な仕事なのに医師の中では最低賃金」「ポストがない」「エキスパートを輩出する土壌がない」等の問題があり、特に、予算の低さは深刻で、かつては出刃包丁で解剖をやっていたというエピソードは、まるでシュール系のギャグ漫画のようで、自分の想像を超えすぎでした。法医学とは「国民の権利を守るための医学」なので、日本で法医学が軽んじられている現状は、人権意識の低さを証明しています。2024/01/04
owlsoul
8
法医学には、死者の正確な死因を究明することで国民の権利を守るという役割がある。しかし、日本は諸外国とくらべ法医学に対する意識が著しく低いという。警察によって事件性がないと判断されれば、それが変死体であっても解剖されない。だが本来、解剖しなければ事件性の有無を正確に断定することはできないはずだと著者はいう。毒物による殺人や医療現場での殺人が多くの被害者を出した後に発覚するのは、雑な死因究明の結果だろう。当然、発覚していない事件も少なくないのでは、と想像される。まさに「死人に口なし」を地で行く、事なかれ主義。2024/10/20
はーこ
6
法医学者の厳しい現状がよくわかる本。海外に比べてほんとに日本は遅れているんだな、と思った。その中でも作者さんはやりがいをもって仕事していて、現状を打破するために頑張っているのだなというのがよく分かった。なんとか改善できないものなのかなぁ…( ´-` )2016/05/19
きなー
2
日本の法医学の現場について語られ、諸外国からどれだけ遅れて異常な状態であるかがわかる。死因究明は介入による予防を考えるという点で社会医学においても重要であり、また新たな治療法につながる臨床へのフィードバックという点でも外せないものであると感じた。高齢社会をむかえるにあたって、多くの人の権利を守るためにも死因究明の責任機関の設立、法医学に関する法整備が必要であると思われる。2013/03/11
キ
1
法医学研究室の置かれた状況が切実に伝わってくる1冊だった。2023/03/28