内容説明
ミルは快楽主義者なのか?彼の快楽主義の思想的特徴とは何か?本書はこの問題に答えるべく、ミルの思想の理論的な構造を明らかにしながら、重要な善である徳、個性と幸福(快楽)との関係を考察する。
目次
第1章 ミルは快楽主義者か
第2章 快楽の質
第3章 快楽の源泉
第4章 快楽と価値
第5章 快楽の序列
第6章 快楽と徳
第7章 個性と幸福
著者等紹介
水野俊誠[ミズノトシナリ]
慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程哲学・倫理学専攻修了。博士(哲学)。現在、津田沼クリニック(副院長)、慶應義塾大学・千葉大学・東邦大学(講師)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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buuupuuu
17
幸福についてミルがとっていたのは快楽主義であるとした上で、ミルが快楽をどのように捉えていたのか考察する。特に低級快楽と高級快楽の相違や、両者の関係性が取り上げられている。ミルの考えでは、ひとは快楽と連合したもの、例えば徳のようなものもそれ自体として望むようになる。この考えを著者は「拡張された快楽主義」と呼んでいる。快楽の質の区別を導入したことで、ミルの功利主義は不徹底なものになってしまったとしばしば批判される。だが著者によれば、快楽の価値という考えが、現代の風潮への批判的な見方を可能にしてくれるのである。2025/05/24
evifrei
15
本書はミルが快楽(幸福)主義を基本にしながら、部分的に客観主義と符号する『拡張された快楽主義』に立つと捉える。客観主義とは物事が欲求の対象となるか否か・快楽をもたらすか否かに関わらず、幸福に寄与すると解する立場を意味するが、この客観主義の中でミルは幸福を快楽以外の物事をそれ自体のために追及する事を含めたものと把握する。その上で、ミルが質的快楽(精神的幸福)の追及を個人の幸福実現のための基礎とした事を検討すると、個人の人生そのものに価値を見出し、人格的自律・自己統治の基礎を築いたミルの思想が浮き彫りになる。2020/04/15