内容説明
「文学」は「戦争」に抵抗できるか。小林秀雄、坂口安吾、保田与重郎は、「書くこと」によっていかに戦争に処したか。戦時下における「書くこと」の意味への問いは、日本文を成立させた「訓読」というプロクラムの吟味へと連結される。画期的な「日本精神=イデロオギー」分析へと向かう新鋭の第一評論集。
目次
1 小林批評のクリティカル・ポイント
2 戦争について
3 万葉集の「精神」について
4 文学のプログラム
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ハイザワ
3
「小林批評のクリティカル・ポイント」。山城むつみ自身はとても丁寧に論を進めていく一方で、論じられる対象である小林秀雄の不合理がただただ目立つ。小林においては「『罪と罰』や『白痴』そのものをただ読むこと」が「『罪と罰』や『白痴』そのものをただ書くこと」に転換する。そこで「批評」と「創作」の間に引き裂かれた瞬間、小林は真に「批評」を書こうとしていたのではないか……という感じ。「ただ読み」、「ただ書く」ことしかできないことを悲劇と捉えるか、喜劇と捉えるかで小林への評価が分かれるのかもしれない。2019/11/11
静かな生活
1
70点*「批評制度」の自己言及としては丁寧な作りとなっている。だが小林秀雄/坂口安吾といった非合理性とかアンチエビデンス性の塊をちゃんとした論理性でパッケージングしようとしているので、ピンとこなかった部分はそこだったのかもしれない。2020/03/31