感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
モトラッド
26
★★★☆著者の修士論文・博士論文を大幅改稿した上で、書下ろしの章を加えた構成。2007年5月30日初版。作品的には『砂の女』までで、そこがちょっと物足りない。同じ著者の『~消しゴムで書く』と被る部分もあるが、異なる切り口もあり、掘り下げも深いので、満足の読後である。2024/10/13
浪
12
芸術的・政治的運動家としての安部公房を論じた一冊。安部の共産党入党から、除名処分を受けるまでの経緯が詳細にまとめられている。また、小説の読解も行っており、個人的にはマルキシズムを足掛かりとした「壁」についての考察が非常に興味深く読めた。特に印象的だったのは安部が「共産党は世界の孤児だ」など過激な発言をしていたこと。2021/09/20
ハチアカデミー
6
『無名詩集』から『砂の女』までの安部公房を「運動体」として捉え、その多方面にわたる活動と創作を結びつけて論じる。第一章で公房の全体像を提示し、以降で各作品を論じる構成も良い。作品だけでも充分楽しめる作家であるが、その背景や当時の動きを知ることで、作品への眼差しが変えられる。マルクスの思想ではなく、文体・文章から受けた影響や、『砂の女』仁木順平の名前を解き明かすあたりが白眉。自己模倣に陥ったとして『砂の女』以降の作品への評価が低い点は保留。それでも、コウボリアンとしては非常に得るものの多い一冊。2012/10/31
mstr_kk
4
じつは通読は初めて。安部の研究書としては圧倒的、ダントツの一冊。情報量が多いだけでなく、テキストの読みがバッチリ的確に決まってゆく。驚異的なレベルの高さ。自称研究者として嫉妬する。というか悔しい。2013/04/29
ヒロ
2
日本共産党、夜の会、世紀の会などの、政治運動、芸術運動の中での安部公房の活動を通史的に解説し、幾つかの作品に言及しながら分析している。幾つかの作品を読んだりしていただけではつかめなかった作品同士のつながりが見えて、作家像が少し明確になった。改めて安部公房は恐ろしく頭の良い作家。2012/07/27