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出版社内容情報
村の子どもらは、かっぱのかんきちと仲良しだ。夏には、片貝川で素もぐりを教えてもらう。ところが、1人だけいつまでももぐれない子どもがいた。それが庄屋の息子=じんろくだ。たった1人でもぐりの稽古をするじんろくが、不幸にも水死する。それを大人たちは、「かっぱのかんきちがやったのだ」と決め付け、殺してしまう。嘆き悲しむかんきちのかあちゃん。その後、村に疫病が流行り、子どもらが生死をさまよう。観音様のお告げは、「かっぱのかあちゃんに、妙薬を作ってもらうしかない」。子ども:かんきちの敵である、大人たちの願いを「村の子らは、かんきちの友達だでなあ」と受け入れる。妙薬を作るには、大きな石が必要だ。片貝川にあった大きなすり鉢上の石で妙薬を作ったかあちゃんは、精根尽きて死んでしまう。妙薬を飲んだ子らは日に日に元気になり、村人はいつまでもかっぱの親子の冥福を祈る。
原作者あとがき
塙町片貝で菊池トヨさんと出会いました。トヨさんはご高齢にもかかわらず、かくしゃくとしておられ、昔語りをしていただくと絶妙な語り口で聞く人を魅了しておりました。菊池さんの昔語りに惹かれて、『トヨばあちゃんの昔話』(第1集・第2集)を編集したのが、カッパのかん吉が産声をあげたときでしょうか。
片貝川の遊歩道の中ほどに、「くりーん」と穴の開いた不思議なすり鉢状の大石があります。美しい自然、清流の心地よいせせらぎ、そしてすり鉢に溜まった水鏡が織り成す幻想的な世界で、かん吉の世界が育っていきました。
原作を菊池トヨさんに差し上げたところ、トヨさんの昔語りの中で、かん吉はさらに深みのある世界を作り上げ、このたび廣田弘子さんのグループに出会って、新たな生を歩み始めたのです。絵本作家・藤原あずみさんの手により、かん吉はいっそう生き生きと動き出しました。
絵本作成に当たりご尽力いただきました廣田弘子さん、藤原あずみさんのお力添えに改めて感謝申し上げます。
佐藤 修
かっぱという異端者を、子ども達は受け入れるが、大人が排除し、あろうことか命まで奪ってしまう。実力者である庄屋の息子の「死」に対して、誰かを犠牲にし、供えなければならない。それは、弱いもの・ヨソ者である。こうした図式が、現代社会にも脈々と流れている。「異端者」「はけぐち・犠牲」「本当の愛」「受け入れること」などについて、考えさせる、中身の深い絵本。
著者等紹介
廣田弘子[ヒロタヒロコ]
保育士、語り手たちの会会員
藤原あずみ[フジワラアズミ]
画家・エッセイスト(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。