内容説明
突然に夫を失ったアリスは、彼をおくるため二人だけの儀式を考えた―雪に閉ざされたアパルトマンの一室。アリスとジュールと、風変わりな闖入者の濃密な24時間のドラマが進行してゆく。
著者等紹介
ブロックホーベン,ダイアナ[ブロックホーベン,ダイアナ][Broeckhoven,Diane]
1946年、ベルギー生まれ。新聞記者を経て、フリージャーナリスト兼作家としてオランダに移住。2000年からはベルギー在住。青少年に向けて病気や死、第三世界からの養子といったテーマで20冊の小説を著し、数多くの文学賞を受賞
オルセン昌子[オルセンマサコ]
茨城県生まれ。東京女子大学短期大学英語科卒業。カリフォルニア大学短期留学。ケルン大学中退。ドイツ人の夫と3人の子どもとともに、ドイツ在住。読書を日々のかてとし、翻訳や著作をとおして自らの体験とつながるテーマに向き合う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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meri
20
小さな痛みが積み重なって、やがてどんどん傷口が開いてゆく。記憶もそれと同じで、小さなほころびが徐々に、そのひとを忘れさせ、喪失だけが広がってゆく。だけど、その痛みは、そのひとが目の前にいるとき、どのように関係を結んでいたかで全く乗り越え方が異なるのだろう。ジュールさんとアリス、ひとり取り残された方はとても辛い。だけど、過ごした日々が、空間が、アリスを『そのとき』まで支えてくれると願っている。本当に出会ったものに、別れは来ないのだから。今を大切に、生きよう。2014/12/19
ケイ
6
アリスの回想は微笑ましいようでありながら、どろどろした部分もあって女性ってこわいなと思わされる。どろどろした部分のない、きっちりとした行動を好むダビッドがいることで、アリスも読者も救われる。ジュールさんの外側の部分…、なるほど。2012/03/24
きゅー
5
アリスは夫のジュールがソファで死んでいることを見つける。死者との静かな対話の時間を乱すのが、同じマンションに住む少年ダビッド。自閉症の彼は毎朝ジュールとチェスを打つのを日課にしていた。このダビットの存在が時にアリスに重なり、時にジュールに重なる。彼は生者と死者の二人を取り持つ媒介なのではなく、彼がまさにアリスとなり、ジュールとなることで不思議な三角関係が生まれている。死からの甦り、復活。そうしたイメージが真白な雪に降り込められた一室の情景を満たしていた。2013/03/27
kon
3
大事な人が死んでしまった日、唐突に訪れた日なら、まるでその人が生きているように普通に過ごし、話しかけ、変わりなく日を送れば、その人はまだ逝ってしまってはいないのではないか、ということは私もきっと思う。現実から逃げているともいえるのかもしれないけど、死に纏わりつくもろもろの煩わしさ、他人の雑音を断って静かにその人と過ごせたらいいのにとも思う。2009/12/02
Mayuko Komori
1
☆☆☆ あと、何十年かして、主人が先に亡くなったとしたら、こんな風に、一日を過ごせる夫婦になりたいなと思えた作品。2013/08/19