出版社内容情報
鶴屋南北、喜多川歌麿、葛飾北斎、曲亭馬琴、山東京伝、十返舎一九……。名手四人の小説と関連作品の図版で、2025年NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の時代をより深く知る!
版元蔦屋重三郎がある日銀座の京伝の住居(すまい)をさも忙(せわ)しそうに訪れた。
「おおこれは耕書堂(こうしょどう)さん」
「お互いひどい目に逢いましたなア」
蔦屋は哄然(こうぜん)と笑ったものである。(…)
「身上半減でこの蔦屋もこれ迄(まで)のようにはゆきませんが、しかしこのまま廃(すた)れてしまっては商売冥利(みょうり)死んでも死なれません。そこでご相談に上りましたが、今年もいよいよ歳暮(くれ)に逼(せま)り新年(はる)の仕度(したく)を致さねばならず、ついては洵(まこと)に申し兼(か)ねますが、お上のお達しに逆らわない範囲で草双紙をお書き下さるまいか」
余儀ない様子に頼んだものである。――国枝史郎「戯作者」より
内容説明
鶴屋南北、喜多川歌麿、葛飾北斎、曲亭馬琴、山東京伝、十返舎一九…。名手四人の小説と関連作品の図版で、2025年NHK大河ドラマ「べらぼう―蔦重栄華乃夢噺」の時代をより深く知る!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
花林糖
15
(図書館本)蔦屋重三郎の時代に活躍した浮世絵師・戯作者を主人公とした8編のアンソロジー。蔦屋重三郎はほぼ登場なし。其々の物語に関係した浮世絵(モノクロ)も有り。印象的な浮世絵は葛飾北斎「鯛」「諸国瀧廻り・下野黒髪山きりふりの滝」。「北川歌麿」「曲亭馬琴」「戯作者」が良かった。<吉川英治(大岡越前(抄))邦枝完二(鶴屋南北・喜多川歌麿・葛飾北斎・曲亭馬琴)国枝史郎(戯作者・北斎と幽霊)永井荷風(散柳窓夕栄(抄))>2025/03/07
果てなき冒険たまこ
2
2025年のNHK大河ドラマ「べらぼう」は蔦谷重三郎を取り上げてるので出版や展覧会は蔦重だらけ。(そういえばTSUTAYAの売り上げは伸びるのでしょうかね)タイトルはもろそれ狙いのこの本、蔦重の時代を謳ってるのはいいけど蔦重なんて全くと言っていいほど登場しない。南北、北斎、歌麿なんていうそのころ活躍した人たちを主人公にした小説が並べられてるだけでそれに対する解説も何もなし。まぁ典型的な流行に乗って売り上げを稼ごうとする目論見ですな。出版社の姿勢の問題。2025/01/08
K
1
(202412,913.68)大河に乗じた、(まあまあ)有名な作家による短編集。(「作品社」ってそういう意味?)邦枝完二「江戸名人集」より「葛飾北斎」の、鯛を描く描写がすばらしくて、北斎のいろいろ読んできたけど初めて目にした。あとは諸国瀧廻りの絵だけは、やはりよい。2025/02/19