出版社内容情報
「牛肉のひれや、人間の娘より、柔々(やわやわ)として膏(あぶら)が滴る……甘味(うまい)ぞのッ」
“世界に冠たる「きのこ文学」作家”泉鏡花の8作品を集成!
『原色日本菌類図鑑』より、190種以上のきのこ図版を収録!
その魅力を説く「編者解説 きのこ文学者としての泉鏡花」付!
お姫様は茸(きのこ)だものをや。
紅茸と言うだあね、薄紅(うすあこ)うて、白うて、美い綺麗な婦人(おんな)よ。
山路はぞろぞろと皆、お祭礼(まつり)の茸だね。坊様も尼様も交ってよ、尼は大勢、びしょびしょびしょびしょと湿った処(ところ)を、坊主様(ぼんさま)は、すたすたすたすた乾いた土を行く。湿地茸(しめじたけ)、木茸(きくらげ)、針茸、革茸(こうたけ)、羊肚茸(いぐち)、白茸、やあ、一杯だ一杯だ。
初茸なんか、親孝行で、夜遊びはいたしません、指を啣(くわ)えて居るだよ。……さあ、お姫様の踊がはじまる。(「茸の舞姫」より)
内容説明
“世界に冠たる「きのこ文学」作家”泉鏡花の8作品を集成!『原色版 日本菌類図説』より190種以上のきのこ図版を収録!その魅力を説く「編者解説 きのこ文学者としての泉鏡花」付!
著者等紹介
泉鏡花[イズミキョウカ]
1873年金沢市生まれ。1893年、「京都日出新聞」の「冠弥左衛門」連載でデビュー
飯沢耕太郎[イイザワコウタロウ]
1954年生まれ。写真評論家、きのこ文学研究家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
コットン
81
泉鏡花のキノコにまつわる8作品で『化鳥』はいろいろな人を見立てとしていてその1つとしてキノコが出ていて話としては一番面白かった。『静心庵』も興味深く、キノコは泉鏡花にとって特別な愛情があるのだろう。また中ほどの60頁ほどは白い良い紙質に変えて文の他に種々のきのこの絵が一望できる。編者がきのこ文学研究家ならではの一冊。2025/03/11
藤月はな(灯れ松明の火)
71
泉鏡花作品には茸出現率が、実は高い。本書はそんな物語に茸好きは一度は御目に掛けただろう、川村清一氏の『原色版 日本菌類図説』×ギュスターブ・モローの『サロメ』×泉鏡花の肖像もミックスさせている。まさに茸愛好家には溜まらん本である。「清心庵」の若妻が夫子を捨ててまで千の傍にいようとしたのは不倫な恋ではない。母性愛からだ。この線引きが泉鏡花作品には透徹しているからこそ、彼の作品は清潔感があるのだ。「茸の舞姫」は毒キノコによる錯乱だったのか?とは言え、茸が纏う衣装はどれも皆、お洒落で女子が侍るのも分からなくない2024/08/29
優希
43
きのこにまつわる作品が集められています。その世界は幻想的で艶っぽい。きのこに神秘を見出していたのでしょうね。鏡花文学におけるキノコの存在について考えさせられました。2025/05/31
ちえ
36
「化鳥」「清心庵」「茸の舞姫」「寸情風土記」「くさびら」「雨ばけ」「小春の狐」「木の子説法」の8篇で「化鳥」以外は初読。他、表紙絵以外にも泉鏡花ときのこ、ギュスターヴ・モローの絵を組み合わせた挿画、きのこの図版と満載。それぞれの作品解説も楽しめた。泉鏡花らしい幻想的なものの他、郷里への思いが伝わるもの、コミカルなものと多彩。年上の女性の記憶が結びついている物が多いかな。全ての漢字にふりがなあり、最初は逆に読みにくかったけれど、徐々に気にならなくなり、かえって読みやすさも感じるようになった。2024/08/23
花林糖
13
図書館本。<化鳥/清心庵/茸の舞姫/寸情風土記/くさびら/雨ばけ/小春の狐/木の子説法>幻想的で美しく妖しい世界。文語体の為物語に入り込み難さがあり少し苦戦。表紙の様な泉鏡花ときのこやギュスターヴ・モローを合わせた絵、ギュスターヴ・モロー、川村清一『日本菌類図説』からのきのこ図版はカラー。巻末に編集者の解説有り。2024/08/27




