内容説明
「純文学の孤高守護神」=突撃戦闘老婆が描く高齢単身女性の生存と幸福―。野間文芸新人賞『なにもしてない』野間文芸賞『未闘病記』に連なる闘病記第三弾。書き下ろし500枚。えっ?私は白内障の手術が無理?貧乏、難病、裁判、糾弾、…勇気はあるけど金はない。日本の医療制度はまだまだ使える?名医達よありがとう。
目次
二〇二二年十一月、貧乏、難病、裁判、糾弾と戦う中にも、周囲の親切で失明を免れ、「無敵」となった老婆、というのは、…。
「とにかくね、白内障の手術なんかでこれくらい喜ぶ人はないよ、なんでこの人はいつでもなんでもかんでも、鬼の首を取ったようにぎゃあぎゃあ言うんだろうね」って言われそうな勢い。でも老婆は知っている。それが本当に鬼の首なんだと。
だっていつも知らない場所でも親切な人がいて、必ず助けて貰える幸福の老婆だから。
「え、私だけ白内障の簡単な手術が無理?」二〇一〇年の七月からその医者に通っていたのに、その間何も伴っていなかった老婆!
ある日突然差別者と呼ばれて収入を断たれ、お金がなければ失明するという設定をプレイさせられるゲームファイター老婆!
「二〇二二年六月五日戊子、肋骨を折った」、と大層に言う老婆、しかもさらにその十日後、「折った肋骨に勝った」とも言ってしまう老婆!
なんか先の見えぬ日々、ふいに老婆の老後を支える良い話が骨折激痛の中に降って湧いた、しかしそこからも結局困難は続き、…。
そんな老婆を襲うさらなる困難、その根源にある文壇ミソジニーと世界ミソジニー(うへぁ)。
え?老婆、駄目じゃんそれ老後破産じゃね?
私小説はいつもエンドレステープ、ほら純文学と老婆と貧乏は仲良しだよ?
さて、妾はいかにして老婆になりしか、は?女子高生からいきなりなりました?いやほっといたらなりますよそれは、ローバーレンジャー戦闘BBAと言って借金抱えても(泣)世界勢力と戦う、エスパー戦士!
七月の夕方を暗くて見えないと書いてしまう、今でも鳥目も同然の老婆、家に帰って世界一うまいチキンライスを食べるものの、…。
盲動して妄動する不屈の老婆、ついに近隣の総合病院を目指す!
名医降臨、万事休みに見えてもなんだか進展がある老婆ミラクル。
そして大学病院に行き、びびりまくる老婆、そのびびりの原因は無知蒙昧のせいというよりも、…。
さて皆様、ここからは一見まったく普通の白内障手術という平凡な日常が始まります。
結局、「心眼」というのは水晶体の混濁とただの錯視によって思い込みが「見える」作家的現象である。
ほら昔の少女マンガは貧乏で不幸で難病でさすらいの天才ピアニスト少女の目が見えなくなっていて、それを偉い医学博士が助けて、手術が終わったら、…。
老婆手、かなこれ、もしや、と思っていたのが立派にそうなっている(汗)。
自分の老化だけでなく、世界の未来から家の老化までも見えるようになった、「千里眼」老婆。
後書き 二〇二三年、二〇二四年、老婆カレンダー―、不屈の老猫ピジョンの最後、性別騒動、トランプの勝利!
21世紀最後の金策
著者等紹介
笙野頼子[ショウノヨリコ]
1956年三重県生まれ。立命館大学法学部卒業。81年「極楽」で群像新人文学賞受賞。91年『なにもしてない』で野間文芸新人賞、94年『二百回忌』で三島由紀夫賞、同年「タイムスリップ・コンビナート」で芥川龍之介賞、2001年『幽界森娘異聞』で泉鏡花文学賞、04年『水晶内制度』でセンス・オブ・ジェンダー大賞、05年『金毘羅』で伊藤整文学賞、14年『未闘病記―膠原病、「混合性結合組織病」の』で野間文芸賞をそれぞれ受賞。11年から16年まで立教大学大学院特任教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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