感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
115
オーウェルやブラッドベリ以来、SF作家は文明の進歩に対する不信や不安をディストピアとして描いてきた。その80年近い傾向を監視、人口調整、災害、労働解放の側面から分析する。犯罪増加、食糧不足、秩序崩壊、過剰労働など直面する危機を防ぐため最新の理論や科学に基づいた対策が、逆に国家権力の暴力化と自由の喪失をもたらすのではとの危機感が文学的想像力を刺戟している。市民生活のユートピアを営むには規律を強制する力が必要だが、その力を抑制できねばディストピアに変貌する。強権国家が増え続ける今日、人類の理性が問われている。2024/09/13
ラウリスタ~
14
研究書ではなく批評家によるSF論(ネット上のnoteに書いたものをまとめたもの)。SFってのは文学においては大衆向けで、どちらかといえば探偵・推理小説に隣接しており、その割には人類の未来を憂う(理系的)上から目線が鼻につくこともあるのだが(SFは好きですよ)、この評論集はそういったそれぞれのSFの限界をしっかり書いている。本・文化の重要性の象徴と語られがちな華氏451の末尾の「本人間」が、自らが「詩人」でありながら詩人を追放したプラトンの国家を暗記している(と自称する)ことについての考察など素晴らしい。2024/09/23
シローキイ
13
「ディストピア作品」と呼ばれる架空の仮想世界を舞台にした文学、映画作品を論じたものとなっている。主体となるのが物語なので、作品の詳細に触れてそこに描かれている世界の解釈を論じるというのが多い印象を受けた。堅苦しい論文というよりも、書評に近いだろう。古典のディストピア小説であるオーウェルの『1984』、ハクスリーの『すばらしい新世界』、ブラットベリの『華氏451度』からSNSによる監視社会や少子高齢化社会に対する「人口調整」といった現代のディストピア作品のもつテーマまで取り扱っており、とても興味深かった。2025/11/23
緋莢
13
図書館本。ジョージ・オーウェル『一九八四年』、オルダス・ハクスリー『すばらしい新世界』、レイ・ブラッドベリ『華氏451度』の古典的ディストピアから、監視、人工調整、災害、労働解放などのディストピアを、小説や映像作品等をもとに紹介しています。「はじめに」で、ディストピアは、ユートピアの対義語として生まれたとありますが、そもそものユートピアもトマス・モアが書いたものは、今読むと、ディストピアにしか思えません。<モアのユートピアが現在のディストピアに 見えるとしたら(続く2024/12/11
Pustota
9
SF(的)作品に描かれるディストピアを要素ごとに分析しながら、その源になっている現実の欲望や問題を考察しており、刺激的な内容だった。分かりやすいユートピアを求め、線を引いたときから、きっとディストピアは始まるのだろう。この本自体が、決してわかりやすいディストピア/ユートピア像を要約して示すものではない。そのような答えを安易に求める態度こそ、誰かにとってのディストピアを生み出すものなのではないかと、そのように感じた。2024/10/08




