内容説明
前編は「三世」で日系収容を知らない「失われた世代」である三世たちの姿を描き、後編の「多感」ではオースティンの七つの小説の構造を日系社会に落とし込みパロディにした二部構成のこの短編集。ヤマシタは、日系収容という「過去」を確かめつつ「三世」としての自分の立ち位置をどのように描いているのか?マジック・リアリズムの騎手による集団的記憶の軌跡!
目次
1 三世(風呂;歯科医と歯科衛生士;紳士協定;ボンベイ・ジン;ボルヘスとわたし;キティのキス;小春日和;結腸・内視鏡;コン・マリマス;三世レシピ;(厳選された)ロスアンゼルス/ガーデナの日系年表)
2 多感(JAストーリーズ)(「多感」に関する著者の覚書;しかたがないともったいない;義理と我慢;モントレー・パーク;エミ;日系アメリカン・ゴシック;ザ・パースエイジアン;オマキさん)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
98
日系アメリカ人作家の作品集。日本っぽい感性を外側の眼鏡から見ているような不思議な読み味。数奇な共感というか、妙な魅力がクセになった。エスプリの効いた文章も好み。「風呂」やコンマリを巫女になぞらえた話は内面に根付いた感覚を改めて気付かせる。男側の都合で移住した女性の半生も印象深い。後半はジェイン・オースティン(JA)の小説のパロディ集。語らない二世と分別があると思っている三世の世代間の意識の相違がコメディ風に描かれ、遊び心も含め面白く読めた。身近なようで馴染みがない日系の人びと。本作は興味深い読書となった。2024/02/19
ののまる
7
日系でもアメリカとブラジルの違いや、日系アメリカ人の一世、二世、三世の世代間の違い。二世が収容所迫害の経験などに沈黙していることは知らなかった。小説としてそれらがずっと底流にあり、オースティン知らなくても面白い。2024/01/27
一柳すず子
3
日系の人々のルーツを垣間見せつつ暮らす様子をジェインオースティンの小説になぞらえたりして描写している。一編ずつ間をあけて読んでいくのなら結構面白いけど一冊にまとまって読むと訳が読みにくい。2024/02/24
brzbb
2
めちゃくちゃおもしろかった。興味深いし笑えるし。日系アメリカ人三世たちの生活の中に日本的なものは存在してるけど、それはアメリカや他のアジア移民の文化と混合したものになっている。ではルーツである明治や大正生まれの一世にとっての日本が「本物の」日本かというと、現代の日本はジャパニメーション、アイドル、料理の鉄人と西洋の文化と混合したものになっている。「本物の」日本文化はどこにも存在しない。太平洋を挟んで日本とアメリカのあいだで万華鏡のように乱反射する日本のイメージ。太平洋戦争開戦での収容所への投獄、2024/06/02