内容説明
「妖怪」はなぜ生まれたか?「怪異」の情報は拡散・増殖し、新たな解釈が生みだされ、変容・変異していく―。怪異学から見る妖怪の成り立ち!
目次
第1部 怪異学総説(怪異とは何か、怪異学とはどういう学問なのか 「怪異」と怪異学;不可視の存在が語り始めるとき 神―その形成と展開;これまでとこれからの「怪異」と「妖怪」の関係 妖怪)
第2部 妖怪列伝―どのように成立したか(「鬼」のイメージはどのように成立したのか 鬼―『出雲国風土記』と日本古代の「鬼」;神獣はどのように姿を変えていったのか 白沢―俗化する神獣とその知識;「神」か「妖怪」か、時代ごとに移り変わる定義 天狗―天変から信仰へ;近世という情報社会の中で膨張する怪異 鳴釜―俗信から科学、そして諧謔へ;室町から江戸時代まで、河童の歴史をたどる 河童;情報発信により地域の神様から妖怪へ 一目連―情報の連鎖と変容;祥瑞か、凶兆か、狐か、美女か 九尾狐;物語に貪欲な近世社会が「神」を消費する オサカベ;近世から近代以降まで、その特徴の変遷 件;水子霊をめぐる言説とメディアのあり方 水子霊―夭逝した胎児の霊はどこに現れ、誰に祟るか?)
特別寄稿 チョコレートを食べること(京極夏彦)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐倉
18
東アジア恠異学会による妖怪論集。京極夏彦の『モノ化するコト』での指摘…妖怪と怪異学術用語の低減的な通俗化…という現状を受けた上で怪異と妖怪という語を丁寧に扱おうとしている。怪異という語が陰陽師や神祇官による国家の危機管理言説から通俗的な異常事態へ至る流れ(そしてその先に妖怪があるとする)を論ずる『怪異と妖怪学』、記紀で同じモノを語るのに鬼という語を使うケースと使わないケース、人を食らう怪しい存在に721年の常陸国では夜刀神とし733年の出雲国では目一つ鬼とするケースから鬼概念の成立の流れを見る『鬼』、2025/07/29
さとうしん
13
「怪異」「神」「妖怪」といったキーワードに対する概説と、「鬼」「天狗」「河童」など個別の妖怪についての議論からなる二部構成。今回はそれぞれもともと祥瑞などの怪異だったものが時を経て妖怪と見なされるようになった経緯に着目。化野燐による怪異や妖怪は本当に怖いものなのか?という問いかけ、そして京極夏彦による妖怪をチョコレート、怪異を菓子に例えた議論が面白い。2024/12/29
Tanaka9999
12
2024(令和6)年発行、文学通信の単行本。再び論説集。どういうわけか連続して妖怪の論説集を読むこととなった。系列が同じこともあり同じような論調である。でもこっちのほうが具体的な対象妖怪がいたりするので面白く読めるかな。比較的短いし。2025/07/20
∃.狂茶党
12
妖怪についての論考十篇と、京極堂によるおまけが一篇。 このシリーズ全巻は読んでないのですが、今のところ最新刊。 なので、2025年なら、入手は容易だと思われる。 オカルトや妖怪について、きちんとしたものを読みたいと思ったら、おすすめです。2025/05/14
眉毛ごもら
4
怪異の一部が妖怪になっていく変遷についての論考集。こちらの会の本デカくて分厚いのが多いので新書サイズで出たの有難い。鳴釜の鳴る科学的プロセスの方は昔でも気がつく人は気がついてたけどそれはそれとして民衆は怪異として扱うって話は面白かった。怪異の原因を探るときに感覚的に分かりやすく面白い話(ただし事実としては怪しい)に流れるよなという点では今も昔も変わらない。京極先生の寄稿で怪異を菓子と定義すると京極先生の自認は菓子メーカーで研究者ではないって書いてたけどあんだけ詳しく考えてるのにその自認なの?!となった。2025/05/24