出版社内容情報
ずっと私たち二人だけの美しい世界が続けばいい。『みんな蛍を殺したかった』の著者が綴るR-18文学賞優秀賞を含む五篇の短編集。
内容説明
「制服を着ているときにしか聴こえない夏の音や、大人にも子供にも見えない夏の映像を、私たちはちゃんと日々感じながら生きていた。」(「瑠璃色を着ていた」) 「ねえ白、人はみんな、半分で生まれてくるのかもしれない。そしてその半分を、必死で埋めようとしている。」(「植物姉妹」)…ほか、R‐18文学賞優秀賞を含む、初期短編五篇を収録。著者自らそれぞれの作品コメントも書き下ろしたファン必携の一冊。
著者等紹介
木爾チレン[キナチレン]
短編小説『溶けたらしぼんだ。』で第9回『女による女のためのR‐18文学賞』優秀賞を受賞し、2012年『静電気と、未夜子の無意識。』(幻冬舎)で単行本デビュー。その後、少女の心の機微を大切に、多岐にわたるジャンルで執筆(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
189
少女たちが同性に向けた友情や憧れの想いを描いた著者の最初期の作品集。私は男ですのでここに描かれた物語を100%理解出来たとは思えませんが、彼女たちが同性愛にのみひたすらのめり込むのではなく現実社会の異性に向けた関心もちゃんと分けて冷静に対処できていることにホッとしますね。若い時期だからこそ抱ける感性が描かれており、著者自身も作品を重ねるごとに成長されて過去の自分と決別されているのだと思いますが、それでも根っこの部分でいつまでも失わずにいたいと思える気持ちが本作にはあるのでしょうね。#NetGalleyJP2025/01/31
Sato19601027
89
小説すばるの新春書き初め座談会で「傑作量産」と書かれた木爾チレンさん。気になったので、12月刊行の初期作品を含む短編集(瑠璃色を着ていた/植物姉妹/りかちゃんといづみちゃん/溶けたらしぼんだ/夏の匂いがする)を読んでみた。いずれも登場する少女たちが透き通っていて切ない物語。しかも、それぞれの作品に、木爾さんの解説が付いており、どのような気持ちで仕上げたかが分かるようになっているのも楽しい。不思議な余韻が残り、青春の一瞬を切り取るのが上手い作家さんという印象を持った。次は、長編作品を読もうと思う。2024/12/28
巨峰
60
濃厚な夏の匂い、少女の匂い。なかなかの世界観が構築されていたと思います。この中では植物姉妹が出色だけど、どの作品も映像化できそうに思えました。木爾チレンさんのデビューのきっかけとなった「溶けたらしぼんだ」も含まれて、もう、12,3年前か。身体を通した交流が占める割合がすごくこの期間で少なくなっている気がします。悪いとはいわないけど。2025/04/12
ゆのん
56
青春物はあまり得意ではないのだが、本作はとても良かった。感じやすく、繊細な10代の気持ちが描かれている『瑠璃色を着ていた』はノスタルジックな雰囲気があり、遠い昔の自分の青春時代を思い出し、ほろ苦い様なくすぐったい様な気持ちになりとても好きな作品。同じ位良かった『植物姉妹』は植物状態で命が尽きるだけの姉を持つ主人公の気持ちが深く描かれていて、まるで自分が主人公になったかの様に胸にせまるものがあった。どの物語も静かで、セピア色を感じさせる懐かしさがあり、それでいて避けては通れない現実をも突きつけてくる。2025/01/12
もぐもぐ
48
多感で感傷的な思春期の頃が鮮やかに甦ってきて、ノスタルジックな気持ちになりました。壊れてしまいそうな繊細さと、文章から伝わってくる夏の匂いになんだか胸がギュッとなる。性別問わず多くの人にこんな時期があったんでしょうね。各話に添えられた著者の思いも良かったです。 #NetGalleyJP2025/01/03