内容説明
ミルの著作は、明治維新以降、1880(明治13)年までの間に、『自由論』や『功利主義論』を含む6冊が邦訳されている。しかし、明治の後半以降、学術界ではイギリスやフランスに代わってドイツが重視されるようになり、ミルへの関心は低下していった。戦後の学術界でも、実存主義や構造主義からポスト構造主義へ、というフランス哲学か、現象学と実在哲学、解釈学、フランクフルト学派といったドイツ哲学が、また英米哲学では分析哲学が主流となり、ミルの思想は「過去の遺物」となっていた。教育哲学・思想の領域でも事情はさほど変わっていない。この領域でミルが言及されるとすれば、「危害原理」についてか、ベンサムと区別されずに「功利主義者」と一括りにされることがほとんどであった。それゆえ、ミルの教育思想については、「自由主義」の側面と「功利主義」の側面は相互にほとんど無関係のものとして扱われてきたのである。本書は両者を結びあい、整合的に解釈できることを構想している。
目次
序章 課題と方法
第1章 ミルの功利主義と教育思想の関係―二次元原理としての教育
第2章 ミルの功利主義による自由主義の正当化
第3章 「生の技術」の三部門による教育の正当化
第4章 ミルの美学と美的教育論
第5章 ミルの自由主義の基礎―決定論と自由の問題
第6章 ミルにおける教育の正義論
終章 ミルの教育思想と自由論・正義論―まとめと今後の課題
著者等紹介
〓宮正貴[タカミヤマサキ]
1980年生まれ。上智大学大学院総合人間科学研究科教育学専攻博士後期課程修了。現在、大阪体育大学教育学部准教授。専門は教育哲学、道徳教育学。博士(教育学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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