内容説明
「あとで来てよ」「えっ」「あとで来いって言ってるだろう!」今日は332件ある。やっと82件目である。同じ家に二度も来るほどのんきなわけにはいかない。あんたね、こっちはそんなのんきな仕事をやっているんじゃないんだよ、と言いたかったが、指先は震えていた。―私は10年間を電気メーター検針員としてすごした。その経験を書いたのが本書である。
目次
第1章 電気メーター検針員の多難な日常(激怒した若い男:引っ越し中の検針作業;執拗な抗議:通路をふざくポリバケツ ほか)
第2章 検針員と、さびしい人、さびしい犬(話をしたくてたまらない:さびしい独居老人たち;セクハラ:さびしさと恋愛感情 ほか)
第3章 誤検針、ホントに私が悪いの?(最悪を覚悟せよ:誤検針の恐怖;覗きの権利:カギは郵便受けの中 ほか)
第4章 「俺には検針しかできない」(休日、苦情の電話:「お知らせ票」を入れたのは誰?;えこひいき:月27万円稼ぐ女性検針員の秘儀 ほか)
著者等紹介
川島徹[カワシマトオル]
1950年、鹿児島県生まれ。大学卒業後、外資系企業に就職。40代半ばで退職し、貯金と退職金で生活しながら、文章修業をする。50歳のとき、鹿児島に帰郷、巨大企業Q電力の下請け検針サービス会社にメーター検針員として勤務。勤続10年目にして突然のクビ宣告を受ける。その後、介護職などを経て、現在は無職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゼロ
129
電気メーター検針員として過ごした10年間を纏めた一冊。1件の検針に40円、250件回って、1万円。検針員は業務委託であり、1年毎の契約更新。電気メーターは、分かりやすいところにあるのかと思いきや、場所によっては店の中や3m上の高台にあったりする。とてもじゃないが続けられない仕事を、ユーモラスに語っています。また検針員の仕事は、スマートメーターの普及により、無くなる仕事。それでも、生きていくためにしがみついて働いている人がいる。世知辛い世の中だな…と感じる一冊で、心が痛くなりました。2020/11/13
けんとまん1007
114
検針。我が家の場合、電気、水道、ガス。そう言えば、気づいたら電気の検針のお知らせが無くなっていた。天候だけなく、いろいろな状況があっても、検針しないわけにはいかない。こんな苦労があることは、想像し難い。検針に限らず、いわゆる世の中を支えていながら、何故か低い位置づけに見られている仕事はいろいろある。少しでも、そんなことへ眼を向けることができればと思う。2022/03/13
きみたけ
112
最近ハマっている三五館シンシャの「○○日記」シリーズ。著者は外資系企業を40代半ばで退職後、50歳から地元鹿児島にて下請け検針サービス会社で電気メーター検針員として10年間勤務した川島徹氏。電気メーターの検針はさほど難しくないものの、天候や家の造り、ワンちゃんのいるいないなどで読み取り困難な場合があると言う。個人事業主なので業務中のミスによる補償がなかったり、読み取り間違いによる誤検針のプレッシャー、スマートメーターの導入で検針そのものがなくなりつつある中、悲哀に満ちた10年間が綴られています。2023/10/26
kinkin
93
メーターの検診員、そいえばそういう仕事しいる方をお見かけしたことがある。確か暑い日、女性だった。ご苦労様ですと声がけしたらありがとうございます。と返事してくれた。読んでいると中には、不審者扱いして罵声を吐く人もいるとか。私は基本的に、何かしてもらったらありがとうをいうタイプ。子供のころから教えられたので。こういう仕事も機械でわかるようになってきているようだ。なんでも便利になった分、ちょっとした会話は無くなっゆく時代なんだなあ、図書館本2024/12/11
harass
91
レビュで気になり借りる。故郷鹿児島に戻った50歳の著者は電力検針員として10年を過ごす。だいたい2000年頃のことだろうか。業務委託契約で、1件あたりで稼ぎはあるが、限られた時間と経費の自腹の制約が。理不尽な現場とお役所仕事に振り回される日々を描く。著者は作家志望で執筆時間を確保するためにこの仕事を選んだのだが…… 将来的にスマートメーターが設置されるので、自動で定時にデータ送信が可能になるため、検針員も不要になるとか。いやはや大変な仕事だ。著者は70になってこの本を出せたと。なかなか読ませる本だった。2020/12/05