内容説明
ダンテ没後700年。『神曲』をもっと理解したいあなたに。『神曲』研究の第一人者による超本格解説。冒頭句の真実、作品全体に散りばめられた対称性、懲罰者不在の地獄とその原理、Armonia(調和)の主題など、これまで顧みられることのなかった視点から、読解例とともに深奥なる世界に分け入る。
目次
第1章 予備的考察―ダンテの歴史観と四つの意味(『神曲』から見る西洋文学史;『帝政論』に見るダンテの歴史観の特徴 ほか)
第2章 『神曲』における天文学(『神曲』の冒頭句;“ベアトリーチェの死”に見る多様な暦の使用例 ほか)
第3章 『神曲』の論理学と修辞学(シュンメトリア(symmetria)とは何か
『神曲』の構築原理としてのシュンメトリア ほか)
第4章 『神曲』における地獄の経済学(顔が見分けられない者たち;新しい解釈のための視点 ほか)
第5章 『神曲』における音楽学(和音)(冤罪により失脚した政治家たち;ピエロ・デッラ・ヴィーニャ ほか)
著者等紹介
藤谷道夫[フジタニミチオ]
1958年広島県生まれ。慶應義塾大学仏文科卒業。筑波大学大学院博士課程文芸・言語研究科文学専攻単位取得満期退学。イタリア政府給費留学生としてフィレンツェ大学に留学。現在、慶應義塾大学文学部教授。専門は西洋古典学(とりわけルクレーティウスとダンテ)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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『神曲』の冥界探訪の旅路に施されていた仕掛けを丁寧に読み解く。作者ダンテに対する批判的視座は欠けているけど、それ以上に基本的な符号と照応関係、類推と多義的解釈、構成と論理といった観点を紹介しており、参考となる案内図書も挙げられている。安易な理解には到底収まることのない『神曲』は、意味の束が重なれば重なるほどに暗く深い解釈の森を彷徨うことになる。円環の美学に一つの世界を構築した『神曲』を読み解く途方もなさとは作中の言葉を借りれば「言葉では及ばぬ言葉を越えた像、記憶では及ばぬ記憶を越えた像」を辿るものだろう。2022/11/12