内容説明
人間を無意識の行動へと誘う、ある種の変性意識をトランスと言います。トランスは、回復を促すリラクセイションとも、人間の内なる力を引き出すゾーンとも、密接な関係があります。この本は、日常臨床に、そのトランスを導入し、使い、治癒をめざす、トランス療法のコツとプロセスを丹念に紹介したものです。著者は、大学病院や相談機関、精神科病院などで治療を続けてきた精神科医で、催眠療法を専門とする日本で有数のセラピストです。その長年のノウハウをシンプルに開陳しました。
目次
第1章 トランス療法の概要―OASISモデル
第2章 観察
第3章 連想
第4章 混乱
第5章 間接的であること
第6章 トランス療法の帰結―Something else
著者等紹介
中島央[ナカシマヒサシ]
精神科医・臨床心理士、有明メンタルクリニック院長。1965年熊本県人吉市生まれ。1997年熊本大学大学院医学研究科卒。医学博士。熊本大学医学部助手、熊本県精神保健福祉センター所長、医療法人横田会向陽台病院院長等を歴任後、2018年6月より有明メンタルクリニックを開院。ミルトン・エリクソンに影響を受けたサイコセラピーの実践・研究を専門とする。2011年日本ブリーフサイコセラピー学会学会賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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小木ハム
9
ミルトン・エリクソンの繋がりで読む。実践してなんぼ、セラピスト向けの本でした。トランス=没入、周りが気にならない状態。催眠療法が『患者に何かを教える』教育的な面があるのに対し、トランス療法は『患者自らに仕事をしてもらう』無意識にまかせる・何かを掴んで自立してもらうことが目的である。その中核にあるのは観察=診ること。患者の口癖、立ち居振舞いなどから違和感を見つけ、セラピストが真似したり、言語化したり、特定の単語を気にしたり、そこに話題を集中したり、連想された言葉を伝えるなどして没入状態に連れていく。2022/01/14
読書を習慣化したい人
1
ミルトンエリクソンの心理療法について長年研究し実践してきた鬼才・中島央先生が“みた”治療的な(自然な)トランスを「没入と解離」と言う観点から記述し、それを治療的に利用するための「連想と混乱」の手法について解説した本。 この本の通りに出来るわけではないのだが、この本を読んだ後は自分の面接が軽やかになる気がする。自分の面接が重くなった時の処方箋。繰り返し読みたい。 日本の精神療法本で一二を争う奇書(※独断と偏見に基づく)。2022/11/15
klopfer
0
読みやすい文体だが内容は概念的で、未熟故に掴みにくかった。エリクソン催眠について予備知識があるとより理解しやすいのかもしれない。連想に関しては自分の臨床に似ている所もあって理解しやすかった。臨床を磨いて再読したい、味のある本。2022/05/03