内容説明
この本は、世界中に点在する、戦争、迫害、破壊、災害、虐殺、社会差別などの人類の悲しみの現場と対峙する「ダークツーリズム」のガイドブックです。誰もが知る有名な場所からマイナーな場所まで、36ヵ所のスポットを選び、見どころやモデルプランなどの旅行情報を掲載しました。また、その場所にまつわる基礎的な歴史解説をしていますので、読み物としても楽しめるようになっています。
目次
ナチスドイツ時代の悲劇を伝える、死の収容所―アウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所/ポーランド
600万人が眠る、花の都の巨大地下納骨堂―カタコンブ・ド・パリ/フランス
栄華を極めたモーターシティーの夢の跡―デトロイト/アメリカ
ポル・ポト政権による門外不出の大量処刑場―キリング・フィールド/カンボジア
明治日本が世界に誇った海底炭鉱―端島(軍艦島)/日本
誰もが認める東西冷戦の象徴―ベルリンの壁/ドイツ
ナチスによって、たった一日で消された村―オラドゥール=シュル=グラヌ/フランス
要塞、そして捕虜収容所となった未完の砦―フォート・ジェファーソン/アメリカ
破壊された砂漠の遺跡―バーミヤンの大仏像跡/アフガニスタン
あの日起こった、テロを忘れないために―911メモリアルミュージアム/アメリカ〔ほか〕
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京都と医療と人権の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
中玉ケビン砂糖
64
「ダークツーリズム」という概念自体は90年代から提唱されていたものの、記憶違いでなければ刊行当時(2016)国内にまだ認知度がなく、「ゲンロン」をはじめとした媒体がキャンペーンを張った少し後くらいだったろうか。その地の歴史の概説とツアープラン(申し訳程度だが見学スポット・具体的アクセス、旅費)をセットで紹介するというとても不思議なつくりになっている。暗中模索感は拭いきれないのであくまでも「読み物」として興味深く読んだ。2023/05/13
阿呆った(旧・ことうら)
21
タイトル通り世界の負の遺産。◆『アウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所』をはじめ、カンボジアのポル・ポト政権による処刑場『キリング・フィールド』、セネガルの奴隷貿易の拠点となった『ゴレの家』などなど。◆日本については、長崎の『軍艦島』、福島の『原子力発電所』、広島の『原爆ドーム』が載せられていた。2017/01/31
ペペ
15
ダークツーリズムという言葉は初めて聞いた。気が重くなりそうだが、実際に訪れて人類の悲しみと対峙することは大切だと思った。2017/07/01
とよぽん
13
2016年6月に初版が出版された本。世界中から36か所の「負」の遺産を載せてある。人災だけでなく天災も。1か所が、写真と現地に関する情報で4ページ構成になっていて見やすい。何よりも一番心打たれたのは、いろは出版の制作者、奥村紫芳さんが記された「あとがき」だった。「自分の目で見ることに勝る歴史との対峙方法はない」と。2016/10/09
contradiction29
11
「深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いている」とニーチェは書いた。その深淵の中に手を突っ込んで引っ掻き回し、何か面白いものを得たいと思っている。その辺がダークツーリズムに心をひかれる理由なのかもしれない。面白かったのはジェフリー鉱山(カナダ)のところで、アスベストの危険性が問題視されたのは1970年代だが、鉱山が閉鎖されたのは2011年だから、危険性が告発されてからずいぶん長い間鉱山は操業していたことになる。足尾銅山と同様、公害というものが経済的な側面を持っていること、人類のカルマのようなものを感じた。2021/06/24