出版社内容情報
コーカサスの国 ジョージア(グルジア)の国民的文学 日本初の作品集 古代の叙事詩のオーラを醸す作品コーカサスの国 ジョージア(グルジア)の国民的文学 日本初の作品集 古代の叙事詩のオーラを醸す作品
アルダ・ケテラウリ
客と主人
蛇を食う者
仔鹿の物語
ヤマナラシの木
カケスの結婚式
あとがき
ヴァジャ・プシャヴェラ[ヴァジャ プシャヴェラ]
著・文・その他
児島 康宏[コジマ ヤスヒロ]
翻訳
はらだ たけひで[ハラダ タケヒデ]
イラスト
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
53
ジョージアの作家ヴァジャ・プシャヴェラの作品集。語られるのは、ジョージアの山岳地帯の人々や動物、植物たちの生活。信仰や出自の違う部族と争う人々と、そのなかで出会った勇敢な敵に敬意や友情を表したくてもそれを許さない村(社会)との葛藤と悲劇。「我らは一つ山の民」だというのに。また動植物の言葉を理解する男の苦悩。木を伐ろうとすれば木が呻き、狩に行けば鳥が叫ぶ。でも人は木や獣を、何かを殺さなければ生きてゆけない。そのどうにもならない不条理、社会や生きることへの言葉にならない思いが行間から溢れてくるようでした。2018/12/17
ヘラジカ
28
銀座シネスイッチにて、チラシを見て興味を惹かれていたジョージア映画。その原作ということで読了。恐らく初のジョージア文学(と言って他に邦訳されている作品があるのだろうか?)。原作と言っても映画は三つの叙事詩を織り上げて作られているようで、この本にはその三作品の他にも三つの児童小説が含まれている。神話のごとく迫力のある叙事詩はどれも悲劇的な結末を辿り読後感はずっしり重かった。この荘厳な作品をどう映像化しているのか、映画自体51年前の作品らしいがとても楽しみである。2018/06/15
Bo-he-mian
12
こういう書き方をすると誤解を生むかもしれないが、ヴァジャ・プシャヴェラは手塚治虫に似ている、と感じた。本書は、日本では珍しいグルジア文学。作者のヴァジャ・プシャヴェラは、19世紀末から20世紀初頭にかけて詩や小説を執筆した。以前、本書を映画化したテンギズ・アブラゼ監督の『祈り』('67)で、山岳地帯の見たこともないようなエキゾチックな風景と詩的な映像美に感激し、手に取った次第。映画の原作である叙事詩「アルダ・ケテラウリ」と「客と主人」は、争う二つの民族の、敵味方の関係を超えた人間の尊厳を描く物語。2020/02/29
micamidica
6
邦訳されている数少ないグルジア文学のひとつ。ヘヴレスティ地方を舞台とする叙事詩三編と、短編も三編。叙事詩はやっぱり原語のリズムが知りたい…!と思ってしまうけれど、その世界に入り込んでしまいなかなか切り上げられない作品たちでした。村の掟にひととして向き合うというテーマでしょうか。短編もどれも素晴らしく、もっと他の作品も読みたくなった。どの短編も人間は脇役の作品で、自然界における人間としての立ち位置を考えさせられます。2018/08/31
フム
6
岩波ホールでチラシを見て気になっていた映画の原作(映画はヴァジャ・プシャヴェラの文学世界のコラージュとでもいう作品とのこと)作者はジョージア(グルジア)がロシア帝国の支配下にある時代のジョージア文学を代表する詩人、作家の一人。本書は三篇の叙事詩からはじまる。厳しい自然の中で、近隣の異民族、異教徒との戦いに明け暮れる中で、家族との考えの違いに苦悩したり、戦った敵への尊敬に葛藤したりと、人間が生きる根源を私たちに問いかける詩的な言葉に溢れていた。映画も観てみたい。2018/08/19