内容説明
殉国・愛国教育の“神さま”から突然、工学教育の祖にされた松陰―。さんざん政治に利用された「松陰ブランド」のタブーに切り込んだ!
目次
第1章 松陰が生まれ育った環境
第2章 国体と密航未遂事件
第3章 教育者としての松陰
第4章 肉体が亡んでも…
第5章 松陰の復権
第6章 明治時代を生きた松陰
第7章 昭和(戦前、戦中)を生きた松陰
第8章 昭和(戦後)から平成も生き続ける松陰
著者等紹介
一坂太郎[イチサカタロウ]
昭和41年(1966)兵庫県芦屋市に生まれる。大正大学文学部史学科卒業。現在、国際日本文化研究センター共同研究員、萩博物館特別学芸員などを務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ニッポンの社長ケツそっくりおじさん・寺
68
ずいぶん思い切ったタイトルに思うが、読めばまさしく相応しいタイトルなのである。吉田松陰生誕から去年まで。前半は吉田松陰伝だが(但し著者による公平な判定の松陰伝なので一味違う)、後半が凄い。吉田松陰がどのように神格化され、政治に右翼に左翼に国策に利用されていったかを描く。安倍首相への忖度で始まったらしき大河『花燃ゆ』に、疑惑の松下村塾世界遺産認定(これは驚いた)。そしてラストが凄い。著者が松陰研究でひどい目にあうのだ。しかし一坂太郎はきちんと闘う人である。吉田松陰の誤った幻は消すべきである。新年新刊の良書。2019/01/17
ざえもん
10
前半は吉田松陰自身の伝記。吉田松陰のことをあまり知らなかったため、純粋に面白かった。教育者としてだけではなく、黒船に密航しようとしたり、老中暗殺を企んだり、革命家の行動力にも溢れていた松蔭。こんなエネルギーを持った男はそうそういない。かっこいい。後半は周囲から見た吉田松陰。時代によひ様々な捉えられ方をされているという。時には革命家、時には教育者、時には勉強家、時代ごとに政権の背景によって印象操作をされてきたらしい。作者は後半をメインに書いて、面白いんだけど、他人の悪口とかが多くて、癖が強いのが残念にも。2020/01/01
スプリント
10
前半は吉田松陰の生涯を辿り、後半は維新・戦前・戦後と吉田松陰の評価の変遷を解説しています。国策や世情によって評価が変わるのは世の常ですね。ラストのある地方自治体の議員から著者が批判されたエピソードが一番印象に残りました。おらが村の英雄を盲目的に信奉する危険性と滑稽さが際立ちます。災難でしたね。2019/03/10
六点
8
「俺の好きな松陰先生以外は認めない」をリアルでやられた著者による吉田松陰の生涯と、その受容の変遷が描かれている。本人は「誰も聞いていない老中暗殺計画」をとくとくと語りだして安政の大獄そのものでなく,附的な位置で死罪となってしまった。まぁテロリストの共謀罪にあたる犯罪者であったのが、弟子たちが大変革を成し遂げたせいで、そのような犯罪者から忠君愛国の人そして大東亜戦争のイデオローグ扱いから偉大な教育者にまで時代に翻弄されてしまったわけである。そしてこの本の著者まで筆禍を被った。歴史とは政治でもあるのだ。今も。2019/01/26
Reiko
4
一坂さんの本は、簡潔でわかりやすく、大変面白いです。何より有難いのは、史実に基づいて書かれていることです。本来の松陰先生が描かれている前半部分すごく良かったです。後半部分は、松陰先生が亡くなられた後、いかに松陰先生が利用されてきたかという内容です。そして、それは今もまだ続いているため、松陰先生は形を変え、生き続けなければならず、現在190歳というわけです。都合で史実を歪めるなど許しがたい事ですが、声をあげるのが難しいのも現実だと思います。立ち向かわれる一坂さんの勇気、本当に尊敬します。読んでみて下さい。2019/02/01