出版社内容情報
モーセはなぜ「ヘブライ人」と記されるのか?!
イスラエルの民を「約束の地」へと導いた“ヘブライ人”モーセ。事実史ではなく“記憶史”の視点から、邪-異-偽のイメージを押しつけられた“エジプト人”としてのモーセ像を歴史のなかに丹念にたどり、排他性を特徴とする一神教の誕生の瞬間を解き明かす!
ヤン・アスマン[ヤンアスマン]
安川 晴基[ヤスカワハルキ]
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
34
21
名著の翻訳を歓びたい。他のアスマン本の翻訳もこれに続けばいい。「エジプト人モーセ」とは、フロイトによる、モーセはエジプト人だったのではないかという問題提起に基づいている。もともと、フロイトがモーセと関係づけたイクナートンの一神教革命は、アスマンにとって専門中の専門。にもかかわらず、アスマンは事実史ではなく記憶史と自身が呼ぶ領域へと赴く。エジプト学は、ナポレオンのエジプト遠征とそれに続く発見によって可能になったものだが、アスマンによるとそれによって見えなくなったある論争的なコンテクストが存在するという。→2017/02/27
路雨
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「フロイトの本はエジプト学、宗教史、旧約聖書学に対する挑戦だった。わたしはこの挑戦を常に感じ、そして、彼の本にこれらの分野がかくもわずかしか応えていないことを、いぶかしく思ってきた。肝要なのは、フロイトが犯した歴史学上の誤りを訂正することではなかった。そうではなく、現在が過去に向けている根本的な問い、〔…〕フロイトをきっかけとして思い出すことだった。わたし自身が「エジプト人モーセ」についてのこの研究に取りかかったのも、多分に、彼と同様、「決着をつける」という必要に促されてのことだった。」2025/07/01