内容説明
桐野夏生、中村文則、平野啓一郎、西加奈子、吉田修一、村上春樹…“悪”に魅入られたかのように次々と生み出される現代日本の小説群は、解読されることを欲している。
目次
序 笑いとマスク
1 私とは誰か?(桐野夏生―『メタボラ』『夜の谷を行く』『バラカ』『抱く女』など;中村文則―『私の消滅』;平野啓一郎―『ある男』)
2 転調(桐野夏生―『OUT』『ダーク』など;桐野夏生―『優しいおとな』『路上のX』など;桐野夏生―『魂萌え!』など;桐野夏生―『ハピネス』『ロンリネス』;桐野夏生―『とめどなく囁く』;桐野夏生―『緑の毒』)
3 カルト、ジェンダー、ホラー(桐野夏生―『ナニカアル』;金子光晴―『マレーの感傷』;桐野夏生―『ファイアボール・ブルース』など;西加奈子―刺青とジェンダー;ロラン・バルト―『デクストの楽しみ』;吉田修一―変容するアンドロギュヌス;桐野夏生―『柔らかな頬』『I’m sorry,mama.』『猿の見る夢』など)
結語 サバイブするヒーロー/ヒロイン
著者等紹介
鈴村和成[スズムラカズナリ]
1944年、名古屋市生まれ。東京大学フランス文学科卒。『ランボーとアフリカの8枚の写真』(河出書房新社2008)他、一連の紀行により歴程賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
TAKA0726
12
桐野夏生、村上春樹、平野啓一郎、西加奈子、中村文明、吉田修一、自身今一つ彼らの良さがわからず何とか近づきたく本書を手に取る。村上は現代日本語に驚くべき変化を与え現代人の現実の会話を変えた。桐野はノンジャンルというジャンルなきジャンルを開拓、エンタメと純文の壁を壊す。OUTやダークでは自死する人の死線を彷徨いながらサバイブし、魂萌え!では吉田と共通のざらざら荒れた音楽性の転調するリズムの心地よさがある。カルト、ジェンダー、ホラーでは西、吉田、中村の繋がりは深い。主題は「幽体」、読んでも今一よくわからない。2020/11/08
田中峰和
5
桐野夏生の作品はここで紹介されたものは半数以上読んでいるが、「OUT」が特に印象に残る。普通の主婦と猟奇的な死体解体が結び付く異常な展開、この作品で一気に彼女のファンになった。カルト、ジェンダー、ホラーは、平野啓一郎、西加奈子、中村文則、吉田修一の作品において、相互に深いつながりを有することが、何度も彼らの作品を通して語られる。興味深いのは西加奈子の刺青への拘り。ほとんどの作品で刺青に何らかの言及がなされているのが意外だ。所々に、村上春樹、三島由紀夫など今や古典的ともなった作家との対比もあって楽しめた。2021/02/15
Nick Carraway
1
評論というものの自由自在さを堪能できる一冊。「類縁」「因縁」「共通点」などの言葉で、桐野を軸に、中村文則、平野啓一郎、金子光晴、西加奈子、吉田修一、ロラン・バルト、村上春樹……と次から次に連想で論を繋いでいく。その跳び方は恣意的であるが、そんなの関係ねえ。語ることが楽しく、読む者がおもしろく感じられれば。現代評論の最先端であり、近代評論の現時点での到達点かも。テクストを楽しむというのはこういうことだ。読者がついてこれなかろうが、フランス語を多用しようが、外国文学の知識をひけらかそうが、そんなの関係ねえ!2020/12/07
鴨ねぎ
0
桐野夏生、平野啓一郎、西加奈子等の著者の作品の関連の解説本とでも言えばいいんでしょうか、桐野夏生さんの「ハピネス」「OUT 」は読んだと思うけど、作家は沢山いらっしゃるので本の関係性は考えた事はないです。 フィクションは楽しめればよいという感じなので、マニアックな本なのかねぇ? 一部で気になる書籍もありますが、今は沢山の本が待っているので気になっても読めないです。2020/10/23