内容説明
若き日に「小さきものの死」で思想家として出発した渡辺京二が、一貫して手放さなかったものは、近代という時代の不可避性を見失わず、そこで失われていくものに思想の根拠をおくことで、歴史の必然性という概念に抵抗してきたことだ。その初期から現在に至る全著作を読み解き、その秘密に迫る本邦初の評伝。
目次
大連
闘病生活と若き日の歌
小さきものの死と挫折について
吉本隆明と谷川雁
患者との「心中」を決意した水俣病闘争
処女作『熊本県人』
『ドストエフスキイの政治思想』
神風連と河上彦斎―反近代の極北
西郷隆盛―明治帝国への反抗者としての西郷
宮崎滔天―アジア主義的虚像の破壊と民衆意識からのインターナショナリズム
北一輝―最も純粋なファシズム思想
二・二六事件と昭和の逆説
消費資本主義との思想的格闘(一)「地方という鏡」
消費資本主義との戦い(二)ポストモダン批判
石牟礼道子とイリイチ―コスモスの豊かさ
逝きし世の面影 滅び去った文明
黒船前夜
歩み続ける人
著者等紹介
三浦小太郎[ミウラコタロウ]
1960年東京生まれ。獨協学園高校卒。90年代から北朝鮮の人権問題や脱北者の支援活動などに参加。『諸君!』『月刊日本』『正論』『別冊宝島』等に執筆。自身のブログ「Blue Moon」で近代史・映画・音楽などの評論を展開する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マウンテンゴリラ
1
渡辺京二という歴史家・思想家には以前から興味を持っていたが、その切っ掛けとなったのは、やはり名著の誉れ高い『逝きし世の面影』を知ったことであった。近代の社会と価値観にどっぷりと浸かり、トップランナーに近い位置まで上り詰めた日本が、バブル崩壊後、失われた10年といわれるような経済的落ち込みを示し、国全体、特に産業界に沈滞ムードが漂っていた、21世紀初頭のことであったと記憶している。明治以降の富国強兵の理念の実現に邁進し、20世紀半ばに壊滅的な挫折を味わった以降も、→(2)2021/02/27
南の風
0
2016年刊。「評伝」シリーズの一冊だが、伝記的な細部はあまり書かれていない。しかし渡辺京二の著作を時系列的に概観する優れたガイドブックとなっている。■渡辺は『逝きし世の面影』で一躍脚光を浴びたが、それまでもそれ以後もずっと在野の思想家、批評家として活躍しており、その眼力と表現力には端倪すべからざるものがある。■「近代」がゆきづまった感のある今日、繙くに値する著者の一人であることが納得できる。■本書は、批判的な視点が欠けているゆえに、もの足りなさもあるが、今後渡辺を読んでいくための多くの示唆を与えられた。2017/09/17