感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ろべると
10
「グリーンスリーヴスによる幻想曲」で有名な、イギリスの作曲家レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ(RVW)は、1958年に85歳で世を去るまでに、9曲の交響曲を作曲した。最後の3曲は80歳を過ぎてからの作品だそうで、大したものだ。これまでイギリス全般についてあまり興味がなく、RVWも捉えどころがないと思っていたのだが、なぜか最近惹かれるものを感じる。ターナーなどの絵画やカズオ・イシグロの小説にも通じる、田園の夕景や荒れ狂う北海などの心象風景に戦争の体験も加味されて、近代英国の歴史絵巻をたどる思いである。 2022/12/05
Decoy
3
生誕150周年を機に刊行された、日本で初めてのヴォーン・ウィリアムズの評伝。生涯がコンパクトにまとまっており、英国固有の音楽を求める過程、戦時中の活動、晩年の驚異的な創作力などが、よく理解できる。ただ、著者による作品評価が、やや微妙に感じられる。原著が出てから20年以上が経過しているので、既に評価が変わりつつあるからだと思うが…(加藤昌則の寄稿は、その点を踏まえて載せたのではないか?)。あと、日本語訳がよりこなれていると、なお良かった。2022/12/13