感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
63
不慮の事故で急死された礒山雅先生。30年間音楽ディレクターを務めてこられたいずみホールの機関誌の文章を中心に、本書は編集されている。特にバッハとモーツァルトに関し、私は、礒山先生の本を貪るように読んできた。名著「マタイ受難曲」は今も付箋だらけ。先生の冷静で理知的な文章に尊敬を覚えながら、でも、時として、その峻厳さが辛く感じることがあった。だから、常にこんな疑問を抱いていた:①先生はキリスト者か、②先生は自ら楽器を演奏されるのか。この本で、二つの疑問が見事に解決した。先生のフルートを、聴いてみたかった…。2021/02/11
どら猫さとっち
5
「住友生命いずみホール」の音楽ディレクターとして携わった音楽学者の、熱い温かい想いが詰まった随想集。著者はNHK FM番組「古楽の楽しみ」でお馴染みの方だったが、同時に演奏会の企画などを手掛けたということに、並ならぬ音楽への熱心と真摯な姿勢を貫いてきたことに、読み終えて心を打たれた。突然の事故により急逝したが、一度でいいからお会いしたかった。彼の不在が本書で、なお一層寂しくなる。2020/12/30