内容説明
沈黙の地平をそこに潜んでいる無数の生のありようをどうにかしてただそれがあるように、言葉でたぐり寄せることはできないものだろうか―写真を見ること、他者の痛みを想像することを問いつづけ紡がれた魂のエッセイ。
目次
沈黙とイメージ
他者、距離、イメージ―鷹野隆大
写真の白、鈴木理策の白
鈴木龍一郎のオデッセイ
Absence―馬場磨貴
写真という生へ向かって―志賀理江子
二つの極の間で―十文字美信
見える傷、見えない傷―土門拳『ヒロシマ』と他者の痛苦をめぐって
建築の経験―鈴木良
ここに、と彼女は言う―志賀理江子〔ほか〕
著者等紹介
竹内万里子[タケウチマリコ]
1972年、東京都生まれ。早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了(芸術学)。東京国立近代美術館客員研究員などを経て、京都造形芸術大学准教授。国内外の作品集、新聞雑誌等に写真批評を寄稿。写真展企画も多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kentaro mori
3
⚫️なるほど、想像することは大切だと人は言う。しかし人間は基本的に、自分にとって都合のよいものしか想像できない。もしも写真がそのような想像しかもたらさないのだとしたら、ただ単純に、写真は十分ではない。ただ見るだけ、ただ想像するだけでは絶対に足りないのだ。写真を見て想像することの思い上がりは、言葉によってとことん知り考える努力を通じてのみ、打ち砕かれるだろう。そして言葉もまた、写真を徹底して見ることによって、その限界を露わにする。想像力を隠れ蓑として苦しい言い訳を続けるわけには、もうゆかない。2018/10/16
HD
1
写真を見ることについて問い続ける著者の考えに触れることができる一冊。 写真家11名について書かれたテキストはもちろんのこと、特にルワンダのジェノサイドを題材としたプロジェクト「ルワンダ ジェノサイドから生まれて」についての制作ノートでは、著者がどのようにして思考を深めているのか、その一端を知ることができ、とても刺激を受けた。 写真を見ること、撮ること、その両方に深い影響を与える素晴らしい本だった。2025/01/08
TOMYTOMY
1
写真というものの持つ効果。一枚に見える背景をコンテクストと共に。 土門さんの論考気合いが入っている。2022/01/31
yo_c1973111
1
写真展や作品などに寄せられたエッセイ集。まずもってpick upされている写真家たちが興味深くて読み進めることをそそられる。 各章頭に写真が貼りつかられており、きれいでおもしろい。 右開きが日本語版、左開きが英語版として構成されていてこの辺りもおもしろい。 英語版は未読。2018/08/28
yk
0
誰でも簡単に撮れてSNSなどにも手軽に載せられて、写真とはいったいなんなんだろう。いい写真とはどんなものなのか、と考えさせられた。書評としてもとてもすき。そこらへんの私はこの本がすきです、みたいなものとは全く違う核心ついてくる。何冊かブックマークしました。2018/11/06