感想・レビュー
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yumicomachi
4
福島市内の学習塾講師である著者の第三歌集。2014年から2019年の作品が収められている。子どもへの眼差しが真摯で優しい。〈ああ春の向こうからどっと駆けてきてふくしまの子らがわれの手を引く〉。福島は歌では常に「ふくしま」と柔らかく表記される。一首だけ、〈「フクシマの桃をあなたは食べますか」問いしひとを憎まねど忘れず〉という歌があり、他者から「フクシマ」と呼ばれてしまうことへのやるせなさが滲む。〈三十代のこんな端っこが焦げていてなんてことだろう君という火は〉等の恋の歌もいい。第7回佐藤佐太郎短歌賞受賞歌集。2022/03/29