目次
月みたい
銀鱈の皮
豆腐
花火
水の色
愛は愛より
秋の日
結婚をする
煙草
雪〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
qoop
5
寂しさや喜びを衒いなく詠み、生活の実相を構えず歌う。飾り気のない叙情性にあふれた歌集。読んでいてひりっと切なくなるが、同時に温かみを感じる。どうしても陳腐な感想しか書きようがないが、たとえ洒落たこと云ったとしても本書にの清々しさに蹴られてしまうだろう。/盂蘭盆のなにが寂しい筋肉をたくさんつけても祖父には会へず/換気扇 がたんと回り始めたり母が煙草を吸つてゐたころ/震災の跡を見に来たんぢゃないんだと言つてみてだめだやつぱり見てる/草食んでぢつとしてゐる夜の猫とほいなあ いろんなところが遠い2020/06/26
hakootoko
4
「自転車のタイヤがどうもやはいんじやないかみたいな体調つづく●うどんのつゆにくづれてしまふかき揚げのからつとかたしかつて家族は●アルミ箔でくるんだだけの弁当を磯にひらいてまぶしさを食む●ひと晩を余震本震つづきたり「こち亀」読んでおだやかになる●結局バスでは食べずに降りてぶらぶらと我が身のごとし二つおにぎり●なんでもさ話してよ、つて言ひさうで言はないきみとだから長く続いた●口づけのくちさがせども木には顔なくて寄り添ふ夕べのかぜに●力の限りあなたをおもふぎゆつと眼をとぢても潰れない二つの目玉」2025/02/09
;
4
良い歌集。年末とかにこたつで読みたい。2018/11/28
浦和みかん
4
上手い歌もあるんだけど、口語的な言い方とか助詞のひねりとか、意外と素直に読ませない歌が多い。花山周子さんが栞文で指摘する「アンバランス」な歌集という形容がしっくりくる。今の自分への過去からの客観的な視点と落胆が、家族の歌や回想の歌などを通して、言外にある感じがする。<うどんのつゆにくづれてしまふかき揚げのからつとかたしかつて家族は><一年に一度は会つてきみと飲む泣きながら飲む飲みながら寝る><霧雨のなかへ傘差すうつしよはぬくいよ金がこんなにぬくい>2018/10/21
toron*
2
それでキャベツを齧つて待つた。焼き鳥は一本一本くるから好きだ うどんのつゆにくづれてしまふかき揚げのからつとかたしかつて家族は 秋の夜の弔事よみたし母の顔、友の顔うかべ次々ころす 逃げることがほとんど生きることなりき落ちて形のきれいな椿 かなり好きな歌集だ。パワーがないと読めない歌集も好きだけどこういうどんなテンションのときにどこのページをひらいても大丈夫な歌集も要る。飲食、生活、母の歌が多く、素直な詠い方と思わせて裏切るような下の句のときもある。かつ韻律も上手い。手元に置いて何度も読みたい。2020/11/10