出版社内容情報
全米図書批評家協会賞受賞作、ウクライナの国民的作家クルコフの傑作長編!
雪原により残されたしたいは、ウクライナ兵なのか親ロシア分離派なのかーー
狙撃兵と地雷に囲まれ誰もいなくなった緩衝地帯に取り残された中年男二人。
クルコフならではの飄々としたユーモアで戦争の不条理を描いた傑作、待望の翻訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
60
『戦争日記』にて存在が明らかになった本が遂に翻訳。親ロシア分離派とウクライナ軍の間で戦争が起こり、村人がほぼ、避難した村で蜜蜂を守って暮らすセルゲーイチ。電気はほぼなし、たった一人の隣人は狡賢いが頼りにもなり、物々交換でその日を暮らす。だが、彼が大切にしている蜜蜂に存続の危機が迫る。彼らを少しでも生き延びさせる為にセルゲーイチは村を出る。しかし、村の外は更に白黒つけたがるが故の不条理のワンダーランド化していた。宗教は救わず、権力の横暴は容赦なく、襲い、人々は心情を押し殺し、「灰色」となって生き抜くしかない2024/12/01
ヘラジカ
60
国と国に挟まれ圧殺されていく人間の大多数は”灰色”であるという当たり前の現実を思い出させてくれる静かな作品。前半は解説で「スローライフ」という表現が使われるほど穏やか(どこか達観している)に異常と日常が混合して描かれており、中盤以降はロードノヴェルへと変化し神話のような超然とした帰還の物語へと変遷していく。感情の振れ幅があまり大きくないが故に、この世に間違いなく存在する限りなく”地獄寄りの煉獄”が圧倒的なリアリティをもって迫ってくる。軽やかな筆致なのに荘厳。卑小な人々に宿る神性を描いた傑作である。2024/10/08
夏
36
日本で刊行されたのが最近だから、現在のロシアとウクライナの戦争の話かと思ったら、2014年から始まった親ロシア分離主義勢力とウクライナ軍の間での戦闘中の話だった。舞台は紛争下のドンバス地方にある、グレーゾーンの村。そこでたった二人の中年男が、3年も暮らしている。紛争が終結した時、この村の住人たちがまた戻って来られるように。主人公は、戦闘には全く参加していないから、紛争中であるのに小説の中に危機感は漂っていない。だがこの紛争が、後にロシアとウクライナとの戦争に繋がってしまうと考えると、恐ろしい。★★★★★2026/02/27
ケイティ
30
前線地帯のグレーゾーンは独特の困難さに巻き込まれた、2017年ごろのドンパス地方。養蜂家のセルゲーイチは日々戦争が迫りながらも、やかんでお湯を沸かしたり、悪友と軽口をたたいたりと、日常のたくましさとはかなさが入り乱れる。ボリュームもあるが読んでも進まず終わらず、ページ数以上に中身が詰まっていて、グレーゾーンの寄る辺なさを体感しているよう。中盤からセルゲーイチとミツバチの旅となり、旅先の人たちと交流を深めていく。目の前の人を放っておけず、求められるが節度をわきまえた彼の距離感と人の良さの描き方が秀逸だった。2025/12/18
フランソワーズ
24
戦時下のウクライナ。グレーゾーンという緩衝地帯の村に住む養蜂家セルゲイの旅物語。戦争の気配はところどころに見られるが、ミツバチの生態に寄り添って生きるセルゲイの生き方や考え方、旅先で会う人々の温かい交流に心が和む。もちろん、黒と白の中間色というのがさまざまなことを示唆している。2025/01/19




