感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鳩羽
5
ニューヨークに暮らし、毎年母の日から母の誕生日まで二ヶ月を日本で過ごすという著者の句集。俳句を読んでみようと思い、表紙が綺麗だったのでたまたま手に取ってみた句集。繰り返しやリズムを恐れない勢いのある句もあれば、みっしりと景色を細かく捉え切った句もあり、同じ作者の俳句をたくさん読むと、生活や何を見ている人なのかということが生々しく伝わってくるようだった。十七音が短すぎて、フィクションなのか真実なのか、確定しようがないなにかが、揺らいでいてとても面白い。2024/08/21
空の落下地点。
2
空に心音を残す、シャボン玉は心の速度、手は旅する心など概念の物質化が巧かった。才能が羨ましい。2024/08/18
kumoi
1
句は17字しかない。自由すぎて何を書いたらいいか分からない現代詩に比べたら作りやすいのかもしれないが、いくらなんでも短すぎやしないか。形式がありそれなりの延長を持つ短歌の方が優れた様式なんじゃないか。でもそうじゃなかった(当たり前)。句は自然を見る、聞く、香る。テクノロジーと比べて、やっぱ花はいいよなあ、という浅はかなものではなく、人の生き方とか事物の在り方を映し出す。ひとつの季語には恐ろしく強靭な歴史があり、半歩でも乗り越えんとする。新しい世界を感知するために我々はよむしかないのだ。2025/02/22
ぷほは
1
書店でふと目を向けると、帯句「まだ人のかたちで桜見ています」。まだ、というのが良いなと思い購入。著者はニューヨークのセントラルパークで満開の桜を見て、亡くなった父母や師匠の姿を思いながら詠んだ句がタイトルに。「人であることを忘れるほど桜」、「母の死を灯して春の闇ゆたか」。他にも自我や身体が自然の中に溶け込むようなキャッチ―さを持っている秀句が多い。「冬の月しんそこ零になりたい日」。季節の変わり目にこういう句集を読むと、社会がそのタイミングでリセットされていく気分に浸れる。言葉を大事に生きていこうと思える。2025/02/12
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- 岩でできた列島 山代巴文庫