内容説明
第一歌集『崖にて』で歌壇を席巻した著者、渾身の最新歌集。
目次
服務規程違反
フレー、フレー
素
ロング・グッドバイ
桜前線
冒険
五輪と腰痛
虚しさを打ち返せ
変身
サマー・グリーティング
ゴールデンタイム
札束で“地方”の頬を叩くな
大回転
廃星チック冬景色
愛は勝て
馬鹿野郎たち
ヒューマン・ライツ1
F
夏空
ヒューマン・ライツ2
梅干し
1052167
二〇二三年の春に考えていたこと
Over the distance
さかなクン
著者等紹介
北山あさひ[キタヤマアサヒ]
1983年、北海道小樽市生まれ。2013年より短歌結社「まひる野」所属。2019年に第七回現代短歌社賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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あや
28
第一歌集「崖にて」を敬愛する歌人の方にすすめられて読んでから大ファンになった北山あさひさんの2020年7月以降の作品を纏められた待望の第二歌集。あとがきにもあるように北山さんの作品はバイクで疾駆するかのようであっという間に読めたのに心に残る作品多数。 何を話し何に怒るの現世(うつしよ)になみだぶくろのラメこぼれゆき/札束で叩いてみせて十万年前の吹雪を思い出すから/羨ましいならなれよ女に、犬に ぐらりと地下鉄がやってくる 北海道の方ならではの作品と職場詠と寿都という町を詠んだ歌群がとくに好きです。2023/11/23
だいだい(橙)
16
第一歌集「崖にて」が予想外に良かったので購入。タイトルがよくない。人権保護団体のアムネスティみたいで手に取るのをためらう。読んでみれば別に社会批判めいた歌がそれほどあるわけでなく、韻律の良さは変わらずだし、安易な他者批判に陥ってはいないように思う。しかし「崖にて」で感じたいい意味の軽さが減った気がする。その時々の世相にいちいち反応しない方が、この人らしい歌が詠めるのではないか。とはいえ、冒頭の「服務規程違反」などは作者独自の視点を感じるし、社会的な目線を入れる挑戦は悪いことばかりではない。2024/07/31
qoop
8
前作「崖にて」を読んだ時にも感じたが、直接的な表現と捻った表現の差が激しく、歌によって印象が異なる。それなのに色合いに統一感があって、読んでいて不思議な心地がする。/民営のPCR検査所の説明書き通りにやって間違える/薄暗い水平線を見ていたら〈地方〉という字がのぼってくるぞ/デモの輪を突っ切って来る黒服のおんなとついに視線は合わず/なんでわたしなんでヒューマン真夜中をひたむきに行くフェリーの灯り/千年をずっと女であるような悔しいすすき野原の風だ2024/03/27
yumicomachi
6
著者第二歌集。歌壇を席巻した第一歌集『崖にて』からの三年は、あとがきに「ものすごいスピードで迫ってくる絶望から、必死に逃げ続けた三年だったように思う。短歌はハーレーダビッドソンのごとく、わたしを乗せて暗闇をタフに疾走してくれた」と書かれている。その言葉どおり、暗闇のなかを苛立ち怒りながら詠む歌が多い。北海道という「地方」に住むことの葛藤も含めて。それはこの一冊の確かな核であり読み応えなのだが、私は〈「まあねー」とハルニレが言い、山が言い、夕焼け雲も言うから素敵〉のような歌も好きだった。2023年11月刊。2024/07/18
トマス
4
寒風吹く北海道での懸命な暮らしを詠んだ『崖にて』に続く第二歌集。単なる嘆きや叫びと異なる芯のある言葉が短歌の形で編まれる。冷たい言葉を冷たいまま味わえるのは、そこにヒューマンのrightとlightがあるから。報道を職業とした短歌も冴えを引き立たせる。2023/12/31