目次
1(空を集める;輪郭線;グリコ;交わる角度求めては;机を埋める;夕暮れの色鬼)
2(英語の海に;無作為;微かに揺れる;きえる、きこえる;半分の月;夏のひとかけ;小指の先;地図から消える;この道を渡る;窓をひらく;カメラロール;ここからが二丁目)
3(句読点;1日と1分;狭間に揺れる)
著者等紹介
近江瞬[オオミシュン]
1989年、宮城県石巻市生まれ。早稲田大学文化構想学部文化構想学科卒業。塔短歌会所属。宮城県歌人協会会員。短歌部カプカプ代表。第九回塔新人賞受賞。第三十一回歌壇賞最終候補作。第一回笹井宏之賞最終選考通過。第六十一回短歌研究新人賞佳作。ラジオ石巻「短歌部カプカプのたんたか短歌」パーソナリティ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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けんとまん1007
34
瑞々しい感性。青春の二文字が脳裏をよぎる。が、それだけではないものが、ここ句集にはあると感じた。そんな中、最後のほうは3.11に関連するパートがあり、ここに、この歌人の立ち位置を感じる。2020/09/06
遠い日
9
青春の歌。恥ずかしくなるほどに、と思いつつ読み進むにつれ、わたしにも思い当たる厳しい自虐や逡巡、飲み込んだことばの苦さや言ってしまったことばの後悔。あぁ、時はただの一瞬も止まってはくれないのだと、改めて思う。若い歌が311の震災に向き合う時、がらりとその佇まいとベクトルが変わる。厳しい自己裁断。言うに言われぬジレンマと、石巻で生きようという決意の重さを歌にする。ひりひりとした痛みを、隠さない。そこに押される。2020/08/29
toron*
4
良いなと思った歌をいくつか。 僕たちは世界を盗み合うように互いの眼鏡をかけて笑った 雨の降り始めた街にひらきだす傘の数だけあるスピンオフ ラムネの瓶に閉じ込められたビー玉は眠る円周率の無限と 夜の道に走り続ける高速の僕らはひかり 抗うほうの 三色の風 永遠の春となる床屋のサインポールを染めて その他、書き切れなかった感想、自分と絡めて思ったことをnoteにまとめました↓ https://note.com/toron0503/n/n902dfc32de382020/06/01
シロクマぽよんぽ
3
短歌って個人の内面を掘り下げることが多いように思うが、この作品はより他者との関係性に焦点化している。僕よりも僕たち、ひとりでする行為よりも誰かとする行為がこれだけ詠まれるのは、結構珍しいんじゃないかと思う。2020/11/29
yumicomachi
3
2020年5月刊行の第一歌集。瑞々しい青春詠の多い〈I〉〈II〉と故郷であり被災地である石巻をめぐる歌と短文が収められた〈Ⅲ〉とが、けっして解離することなく、一人の青年の輪郭を描き出す。〈それはもうほとんどたましい たったふたつの雪見だいふく君と分ければ〉〈いまを吹く風 恐竜のほんとうの鳴き声を誰もずっと知らない〉〈夜の海確かに君を感じつつ僕は僕だけと話し続けた〉〈あの時は東京で学生をしていましたと言えば突然遠ざけられて〉〈Uターンの理由は震災かと問われ「まあ」と答えてはぐらかしてる〉監修・解説:山田航。2020/09/04