目次
村次郎選詩集
村次郎を発見しよう(管啓次郎)
著者等紹介
村次郎[ムラジロウ]
1916‐1997年。本名・石田實。慶応義塾大学フランス文学科卒業。1952年以後、家業である旅館石田家(八戸市鮫)の経営に専念するため発表を断ったが、その後も未刊詩集のための創作を続けていた。没後、「村次郎の会」により『全詩集』が刊行された(2011年)
管啓次郎[スガケイジロウ]
1958年生まれ。詩人、明治大学理工学研究科総合芸術系教授。デビュー作『コロンブスの犬』(弘文堂、後に河出文庫)以来、旅と文学をめぐるエッセーを多数発表。『斜線の旅』(インスクリプト)により読売文学賞受賞(2011年)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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スミス市松
17
まず自然への透徹なまなざしがある。詩人が黙しながら静かに対象へ没入していく矢先、自然によって思わぬかたちで「もう一人の吾」を見抜かれる。交差点としての抒情的詩行。だが詩人と自然に〈見る/見られる〉の反転が起こりながらも、つねに草原では風が吹き続け、上空では鷗が飛び続け、断崖では波が打ち寄せ続ける。つまり「もう一人の吾」は見出された次の瞬間には過ぎ去っている。ここに村次郎の詩の寂しさがある。彼の詩を辿って独り空っぽになった読者の心には、痕跡と残響が織りなす八戸・鮫角海岸段丘の風景がのびやかにひろがっていく。2018/11/22