内容説明
人間の条件と可能性を大胆に更新する人類学者インゴルド。ジャンルを越えて共感を呼んだ『ラインズ』につづく待望の邦訳。“線”から“つくること”へ!
目次
第1章 内側から知ること
第2章 生命の素材
第3章 握斧をつくること
第4章 家を建てること
第5章 明視の時計職人
第6章 円形のマウンドと大地・空
第7章 流れる身体
第8章 手は語る
第9章 線を描く
著者等紹介
インゴルド,ティム[インゴルド,ティム] [Ingold,Tim]
1948年英国バークシャー州レディング生まれ。社会人類学者、アバディーン大学教授。トナカイの狩猟や飼育をめぐるフィンランド北東部のサーミ人の社会と経済の変遷についてフィールドワークを行う
金子遊[カネコユウ]
1974年生まれ。映像作家、批評家、民族学研究。慶應義塾大学非常勤講師
水野友美子[ミズノユミコ]
1983年生まれ。関心領域は社会的過程としてのアート
小林耕二[コバヤシコウジ]
1969年生まれ。東欧文化研究(美学)。総社土曜大学主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 3件/全3件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
wadaya
9
素晴らしい本をご紹介。僕は元々芸術と哲学の双子のような関係を実感していた。それが考古学、建築、政治、経済に枝葉を伸ばした。その根底には常に哲学があった。哲学の何が面白いかって?それは知識を身につけることなんかじゃない。自分の中に眠る財宝を掘り出すようなエキサイティングな作業なのだ。君は哲学を読んだから思考が身についたと思うかもしれない。けれども実は、それは君の中に元々存在していたものなのだ。だから今、空っぽである自分に落胆することはない。メイキング・・・君が君の手で、君自身の素質を見出す日がきっと来る。2017/11/14
iwtn_
3
メイキング、作ることと学ぶことの一体性。すべて、岩石・金属などの固体も、究極的には動的な存在で、生物もそう。流れ、動く。その中でリズムを合わせることでコレスポンダンスする。腑に落ちる、というか、本の表現的には収獲は少なかったと言うべきか。 ただ、手のデジタル化に関しては一言。プログラマがキーボードに拘るのは、書くことと手を動かすことが明瞭に別れないから?Apple Pencilが筆圧を読めるようになった今、どこまで物理的な鉛筆に拘るか。とはいえ、全く違う道具として扱うので良さそう。別の道がそこにある。2022/12/25
yo_c1973111
2
キーワードはコレスポンダンスだろう。人がものとかかわる経緯を観るのではなく、実体験を経て考察する人類学者であるから興味深い。『ラインズ』から至るが、本書はエリアと深度が広範だ。思考(言葉)から創出されるものだけが結果としてのモニュメントとして確立するわけではない、いやむしろモニュメントへの概念を疑う。ものを手で触りながらものを活かす経験を編んできた人類の価値への再考察で、大いに有意義だ。箇所によっては論理の飛躍を感じるが、それも歩幅の不均衡性による味と捉えよう。次作はあるのかな?期待したい。2023/02/06
SQT
2
何かを作るなかで、その「もの」が成り立つという立場。そのため、質量形相論(その「もの自体」とその「もののフォルム」に分類できるという立場)に批判が向けられる。インゴルドのなかではエージェンシーすら存在しないため、それぞれのエージェンシーによる相互作用という図式自体が成立しない。コレスポンド(応答・交感)していくなかで、その「もの」が現れる。たとえば凧は、風と人とコレスポンドするなかで凧として上がっていく。その他の点。アンチ博物館(ものを終わらせない)、アンチコンピュータ(手で描くときの質感)2018/11/14
渡邊利道
2
人類学とは、民族学的なデータを用いて人間の文化がいかに変わりやすいものであるかを研究する学問でると定義し、四つのA、人類学、考古学、芸術、建築を、豊富な実例に基づいて諸流域を横断しながらその「人類学」的思考練り上げていく思弁的エッセイ。独特のドライヴ感があってするすると読めるがこれはほとんど文学だなあ。2018/05/13