内容説明
近代化の進行とともに“カリスマ化”した明治天皇、敗戦の焦土をみて“東京に残る”決断をした昭和天皇。生前退位論にゆれる天皇制の意味を御厨貴が日本近代史にさぐる!
目次
第1章 明治史の「流れ」と幕末・維新期の「歴史物語」
第2章 明治天皇と「建国の父祖共同体」
第3章 昭和天皇と「宮中」
第4章 大正政治史を彩る司馬流と風太郎流
第5章 二・二六事件―天皇とテロリズムを描き出す清張流
第6章 一九三〇年代の精神の自由―大佛流と伊東流
第7章 占領―安保・講和・新憲法
著者等紹介
御厨貴[ミクリヤタカシ]
政治史、オーラル・ヒストリー、公共政策。東京大学名誉教授、放送大学客員教授、青山学院大学特任教授。主な著書に『政策の総合と権力』(東京大学出版会、サントリー学芸賞受賞)、『馬場恒吾の面目』(中央公論新社、吉野作造賞受賞)ほか多数。1951年東京都生まれ。1975年東京大学法学部卒業、同大学法学部助手。1978年東京都立大学法学部助教授。1988年同大学法学部教授。1989年ハーバード大学イェンチン研究所客員研究員。1997年政策研究大学院大学客員教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Haruka Fukuhara
6
御厨先生の著作は見つけ次第だいたい読んで来たと思うけど、個人的には一番楽しめた本だった気がする。この叢書シリーズ、面白そうな本が多くて他にもいろいろと読んでみたい。戦前史と銘打ちつつ、どう考えても戦後の話もしているのはおしゃべりな御厨先生らしいところ?2017/04/26
らっそ
4
薄く既読感があったけど、再読だった2020/06/08
バルジ
3
「戦前史」という明治から昭和戦前期、ひいては占領期以降まで射程伸ばした御厨講談政治史学のアンソロジー。口語体でソフトな文体なのでつい軽めの内容かと思ってしまうが、内実は独特の切り口から日本近代を捉える。「建国の父祖共同体」と「感泣の臣下共同体」という視覚は文書史料だけでは捉えがたい、明治天皇と維新の元勲達との心理的紐帯を見事に表す。また、原敬と後藤新平という同時代に活躍した岩手出身の政治家を対比させ後者をプロジェクト型政治家とし長州閥の「パトロン」が存在したからこその政治家だったと述べる。2020/03/16
suzuki
2
放送大学の講座を本にまとめたもの。 戦前の明治天皇と元老、昭和天皇と宮中官僚、政治家との関係について、当時のジャーナリストによる資料をもとに考察。 勢い余ってか、タイトルのテーマから外れた終戦後の戦後社会の変容についても語られる。 最近の学生には、著者が伝えたい当時の空気感を伝えることが難しくなったと嘆いているが、本書からはその当時の空気感が伝わってくる気がして、当時のことをもっと知りたくなった。2019/10/19