内容説明
古代ギリシャから続く知性の歴史に日本国憲法の精神を探る佐藤憲法学のもう一つの成果。
目次
第1章 現代の「憲法」(「立憲主義」)についての典型的な理解
第2章 「憲法」の意義・種別・分析的構造
第3章 「憲法」(「立憲主義」)の成立過程
第4章 アメリカ憲法の歴史的寄与
第5章 フランス革命の衝撃と成文憲法の普遍化
第6章 現代の「憲法」(「立憲主義」)への展開とその課題
著者等紹介
佐藤幸治[サトウコウジ]
憲法学。京都大学名誉教授。司法制度改革審議会会長などを務めた。1937年新潟県に生まれる。1961年京都大学法学部卒業。住友銀行入行。1962年京都大学法学部助手。1964年同大学助教授。1975年同大学教授。1991年同大学大学院法学研究科長・法学部長。2001年近畿大学法学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
26
穂積陳重によれば、憲法を最初に訳語としたのは1873年の箕作麟祥という(18頁~)。国家総動員法は、法律に留保されていた国民の権利・自由の多くを勅令に委ねるもので、明らかに憲法違反だった。が、近衛文麿の絶大な人気で議論されることなく可決された。アメリカの憲法の父マディソン:自由と共和政体を尊重、政府に必要な安定性と活動性を確保することこそ憲法の最重要課題と捉えていた(188頁)。2016/01/28
ceskepivo
9
立憲主義は長い歴史を通じて人類が学び取った深い叡智。立憲主義の神髄は、政治的権力に対する法的統制であり、その点、法律家、法曹の果たす役割が大きい。違憲立法審査制が「国会が唯一の立法機関」であることとの関係で難しい制度であることは理解するが、違憲か合憲かで世論が分かれる場合に、最高裁が黙っているというのはいかがか。2015/08/08
うえ
5
これは名著。日本では余り触れられない立憲主義の祖国イギリスについてもコークやブラックトン等詳細。思想的宗教的背景はやや甘いがかなりの文献を狩猟し読み応え十分。日本の違憲とは…「最高裁判所の憲法判決には、先例としての事実上の拘束性がある。そして、最高裁判所の違憲判決は、違憲判決は、違憲無効とされた法律を法令集から除去せしめる効力を有しない(有するとなると、それは法律を廃止するという立法行為「いわゆる消極的立法」となって、国会が「唯一の立法機関」とする憲法四一条との関係で問題となる)」各国の違憲審査にも詳しい2015/07/31
スミレ雲
3
西田哲学を引いているところ、田中美知太郎をひいているところが新鮮であった。政治・行政の話をしながら、彼らを出してくるところが面白い。東京堂でフェアをしていたので、目にとまった本だけど、買ってよかった。2016/08/02
yo yoshimata
3
とても勉強になりました。短い文書に難しい言葉が続くという「読み応え」ある一冊です。立憲主義に不可欠な分野として司法への目配せが詳しい。「日本国憲法は、人類の長い経験と叡智の蓄積の表象である立憲主義の展開の現代の到達点というべきものを具現していることを、明確に認識して理解すべき」との言葉を重く受け止めました。2015/12/11