内容説明
カタルーニャ語辞典を日本で初めて編纂し日本文学をカタルーニャ語に翻訳、バルセロナで“ベストセラー作家”になる。ふたつの文化を行き来した、元銀行員、今は学者の人生がつまった語学エッセイ。
目次
第1章 「小さな言語」に出会うまで(銀行員になる;バルセロナの語学研修生 ほか)
第2章 カタルーニャ語事始め(カタルーニャ語とは;武器は本一冊、カセットテープ二本 ほか)
第3章 「二枚舌」の街、バルセロナ(関西へ、そしてカタルーニャへ;初めて本を出す ほか)
第4章 市場を独占する野望(「小さな言語」で食っていく;極小のパイ ほか)
第5章 半分カタルーニャ人(帰国後の息子たち;妻も主婦から研究者へ ほか)
著者等紹介
田澤耕[タザワコウ]
1953年生。一橋大学社会学部卒。東京銀行に勤務後、バルセロナ大学にて博士号取得(カタルーニャ語学)。法政大学名誉教授。専門はカタルーニャ語・文化。2003年、カタルーニャ自治政府サン・ジョルディ十字勲章受章。2009年、外務大臣表彰。2018年、カタルーニャ語作家協会名誉会員。2019年、ラモン・リュイ財団国際賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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チャーリブ
48
カタルーニャは、近年の独立運動で世界の注目を集めていますが、著者は長年にわたってカタルーニャ語の研究や翻訳活動に携わってきた人物です。本書は銀行マンだった彼がどのようにしてこの言語に出会い、学び、そして研究者として評価を確立してきたかというライフヒストリーです。未踏の道を分け入っていくわけで、苦労も多かったに違いありませんが、前向きで実利的な文章は言語学の人のものとは思えません。そして後書きを読むまで彼ががんで余命幾ばくもないなんてまったく想像もできませんでした。他の作品も読んでみようと思います。○2022/11/07
kanki
16
自伝。銀行退職し大学院へ。憧れの知的生活。カタルーニャ語、劣性言語の文化を知れた。面白かった2022/08/16
ぽけっとももんが
12
著者は「小さなことば」であるところのカタルーニャ語の専門家。銀行マンだった彼が運命に導かれるようにカタルーニャ語と出会い、また伴侶やよき師、友人に巡り会う。文法書を書き、辞書を作り、カタルーニャ文学を日本に紹介するだけではなく日本文学をカタルーニャ語に翻訳まで。氏がワルクチ言ってる大学はまさか我が母校かと検索したら(違ってた)そこですでに鬼籍に入られたことを知り、しょんぼりして別荘を買った話など読む。残念だなぁ、もっといろいろ読みたかった。2022/11/27
かなすぎ@ベンチャー企業取締役CTO
11
マーケティングというか自分のポジションの築き上げ方がすごいうまい人だなと思いながら読み進めていた。元々カタルーニャ語に特別興味あった訳でもないが、海外で知的生活をしたい、そして、日本人が誰もやっていないところという点からカタルーニャ語に目をつけて、習得、権威となっていく人生はものすごい戦略的で、賢い人だなと思った。日本語の辞書がない言語の習得方法は、学校での語学学習とは異なる次元の難易度だったのだと思うがひたむきに地味な努力を続けたのも伝わってきて感動した。2022/12/11
ゆうすけ
11
実が11月に読了した唯一の本がこちらでした。田澤先生が翻訳されたマルセー・ルドゥレダの『ダイヤモンド広場』を読んだことがあるのですが、これが非常に印象的な小説でなぜか記憶に残っていました。岩波文庫なんてまず読まないのですが、丸善で本当にたまたま手に取ったのです。ご縁を感じます。それにしてもこんなに激動というか面白いご経歴とお持ちの方だったとは知りませんでした。東京銀行出身というのがまずシブい。適当のようでいてしっかりと自分の強みを自覚してしたたかに戦略的にキャリアを構築されています。早逝が悔やまれます。2022/11/11