内容説明
藝大で福祉?“認知症を演劇で擬似体験”“「死にたい人の相談にのる」という芸術活動”“西成のおばちゃんと立ち上げるファッションブランド”etc.東京藝術大学生と社会人がともに学んだ「アート×福祉」プロジェクトの記録。
目次
なぜ「アート×福祉」?―アートの特性が社会を変える(日比野克彦)
講義編(「助けて」といえる社会へ―ホームレス支援と「子ども・家族marugotoプロジェクト」(奥田知志)
「風テラス」という試み―セックスワーカーの法律相談(浦〓寛泰)
ダイバーシティと「表現未満、」―重度知的障害者と家族の自立(久保田翠)
鬱から始まるアート―躁鬱研究家と「いのっちの電話」(坂口恭平)
誰もが誰かのALLYになれる―多様な性のあり方とフェアな社会(松岡宗嗣) ほか)
実践編(対談 福祉と建築が向き合う、答えなきもの(金野千恵×飯田大輔)
取材記事 普通って何だろう?―「見た目問題」を超えて(取材先 石田祐貴)
取材記事 日常というギフト―地域の「信頼」というセキュリティ(取材先 ミノワホーム)
取材記事 誰かのミカタ地図―孤立したひとの居場所をつくる(取材先 香取CCC)
論考 他者について想像する力、変わろうとする力(田中一平) ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
78
東京藝術大学が行っている「DOOR」という社会人向けのプログラムの紹介。ケアとアートがどう結びつくのだろうと思ったが、視点を何十度も変えられた本だった。特に障害を持った方やお年寄りの介護という点で、ケアする人・ケアされる人という関係性の固定化を、関わり方を変えることで変化させることができるというところに知らず知らずのうちに自分の抱いていた偏見が破壊された。新しい視座をひらいてくれる本だと感じたので、強くおすすめしておきます。2022/05/20
けんとまん1007
61
目から鱗とはこの本のことだと思う。ケアとアートという二つの概念からして、自分の認識を遥かに超えている。いかに、視点・思考・視野の広がりが、まだまだなのかということ。人と人、人の環境・建築物、人と社会・世間との在り様がどうなのかを考えること。共通して述べられているのが、二つの概念の親和性。自分の中の重要なキーワードである利他と通じるところがあるようにも思う。境界線をひきたがる社会、その曖昧さを排除する・あるいは耐えられない社会と、その傾向が強くなっているからこそ重要な視点だと思う。2022/03/30
joyjoy
10
アート=創造性。「…ひとはどんな苦境においても、そうした創造性に小さな喜びや希望を見出し、自己と向き合い、ときに他者とそれを共有することで、ひとはひとらしくあり続けることができ、「生きよう」とする思いをも強くできる」。「アート×福祉」をテーマにした、多様な分野の専門家による講義。自分も受けてみたい。「共に」のかたちも様々。わくわくした。どれも興味深かったが、六車由実さんの「介護民俗学」について、もう少し知りたくなった。「プリズン・サークル」坂上香さんの修復的司法の話も、またここで出会えてよかった。2023/11/02
オフィス助け舟
8
DOORは、東京藝術大学が開設している主に社会人を対象とした履修証明プログラム。「アート×福祉」をテーマに学習プログラムが組まれる。本書は、DOORで行われた講義の一部紹介を通じて、芸術と福祉がいかにかけ合わさり、社会に寄与する可能性があるかを感じさせる内容。ホームレス支援やLGBTQに関する情報発信、介護施設、罪を犯した人と社会の共生など、それぞれ独自のテーマでの活動がされていて興味深い。老いや障害や犯罪、社会格差といった苦しみの中から芸術が生まれて、それが彼ら彼女らのケア(福祉)につながっている。2023/10/07
しまかな
8
神楽坂のかもめブックスにて購入。 わたしにも、今後を生きる人たちにも、"これは教科書となるべき"と言いたい1冊でした。現場のリアルと実践、目指すべきとその根拠となる理論が詰まっていた。まだ考察には至らないけど、メモ程度に。 ・老いやぼけを演劇を通して楽しむこと。"「いまここ」を共に楽しむということです。"p149 ・ケアの本質。"ナイチンゲールは「ケアとは科学であり、アートである」といっています。解剖生理学的に実践を行う、一方でそれぞれのひとにとっての最善を創意工夫して実践していく(…)"p179 2022/08/20
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- 和書
- 皇族誕生 角川文庫