目次
1(水中で口笛;夜の海 ほか)
2(Siesta(2013)
みんなみたいな ほか)
3(きみちゃん;電球売り場 ほか)
4(通勤が好き;なか卯ソング ほか)
著者等紹介
工藤玲音[クドウレイン]
1994年生まれ。岩手県盛岡市出身。著書に『わたしを空腹にしないほうがいい』(BOOKNERD)、『うたうおばけ』(書肆侃侃房)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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tenori
49
工藤玲音さんの第一歌集。あとがきには堂々とこう記されている。『おわりに、石川一さんへこの歌集を捧げます。どうだ。わたしはいま、ここにいます』と。石川一=石川啄木であり、啄木と同郷(岩手県盛岡市渋民)の玲音さん流のリスペクトの仕方であり、挑戦状だと思うと楽しくなる。短歌の枠組にとらわれない破調を含む自由な言葉は明るく、せつなく、パワーに溢れている。それは啄木とは異なる世界で同列ではない。ただ、岩手の風土に対する愛着と、何やら執着のようなものは共通している気がする。東北人は東北が好きなのだ。2021/05/09
konoha
46
「氷柱の声」のくどうれいんさんの歌集。スマホの写真や動画機能を思わせながらも、若く、瑞々しい感性で切り取った風景、言葉の組み合わせ、リズムが楽しい。一瞬も、永遠も慈しむ気持ちを感じる。なか卯、てんや、銀だこなど、章のタイトルも身近で、ユニーク。東京に過度にあこがれない東北/東京の視点が新鮮。「ガーベラもダリアも花と呼ぶきみがコスモスだけはコスモスと呼ぶ」「あこがれは棒を使って掴み取れ自撮りに星は写り込まない」「二両目に乗ると三駅目で桑の実と葉が窓のすぐそばに来る」2021/08/29
mm
27
時には呆れるほどまっすぐだ。時には撫でてあげたい感じに丸まっている。ある瞬間には、全身で光を反射させ、別の瞬間には光をパクりと飲み込んでしまう。360度、24時間、そして10年の工藤玲音さん。短歌は武器で道具だね。鋤みたいなもんか。道具にもなり武器にもなる。ついでにすき焼きも作れる。2021/09/12
しろくま
25
少ない文字数で言葉を紡いで、こんなに瑞々しい表現が出来るんだ。ふと気になったけど忘れてしまったこと、記憶の中に積み重なった懐かしい人や景色や匂い、心を揺さぶられた感情が次々に浮かんできた。玲音さんの歌に出会わなかったら思い出さなかったな。「おにぎりがまだあたたかい鞄抱き徒歩通勤で春のまんなか」という歌がお気に入り。2021/05/15
夏
24
読んでいて情景が浮かぶ、色が浮かぶと感じる短歌集だった。著者のことは存じ上げなかったけれど、言葉の選び方がとても美しく、まるで綺麗な風景を見ているような気持ちになった。東北をモチーフに書かれているものも結構あって、地元を大切にしている方なんだとも感じた。『水中で口笛』という題名に惹かれ、中身もタイトルと同じくらい、または凌駕するくらい良くて、読んでよかったなと思った。著者はわたしと年がいくつも離れていなくて、同年代の人がどんどん活躍していく様がとても眩しい。★★★★☆2021/10/06