内容説明
20世紀フランスにおける哲学史研究の大家ゲルーによる、18世紀ドイツで活躍した哲学者マイモンをめぐる古典的論考(一九二九年)。マイモンが実在性としての理念に微分の実現という視角から迫ることの意義を明らかにする。マイモンの微分は関係性の中で相互的規定を受ける各項の働きを指すだけでない。それはライプニッツの無限小に示唆を受けた無限小としてのΔxやΔyを経て物自体を無理数と捉えることへ向かう。超越的なものをひたすら避け、内在に訴えようとするこの議論はドゥルーズらを触発してやまない。
目次
序論 マイモン哲学の精神
第1章 ア・プリオリな総合判断にかかわる問題(『純粋理性批判』のコペルニクス的な仮構;ア・プリオリな総合判断に関する事実問題および権利問題の問い カントによる解決の不十分さ ほか)
第2章 無限な悟性、諸微分―“質料”の演繹(意識の微分に関する理論と質料の演繹;“自我”と意識 ほか)
第3章 “空間”と“時間”の演繹(空間概念と時間概念の解明(Er¨orterung)
“空間”と“時間”の演繹)
第4章 “カテゴリー”の演繹(“カテゴリー”の演繹;権利問題と事実問題の問いへのマイモンの応答 ほか)
結論 実践哲学の観点におけるマイモンの批判の諸帰結
著者等紹介
ゲルー,マルシアル[ゲルー,マルシアル] [Gu´eroult,Martial]
1891年生まれ、1976年死去。フランスの哲学者、哲学史家。ストラスブール大学、ソルボンヌ大学などで教壇に立った後、コレージュ・ド・フランス教授。デカルト、スピノザ、マルブランシュ、ライプニッツ、バークリ、マイモン、フィヒテなど、17世紀から18世紀にかけてのヨーロッパ哲学に関する著作多数。デカルト解釈をめぐるフェルディナン・アルキエとの論争はよく知られている。ジュヌヴィエーヴ・ロディス=レヴィス、ジュール・ヴュイユマン、ミシェル・フーコー、ジル・ドゥルーズなどに影響を与えた
増田靖彦[マスダヤスヒコ]
1967年生まれ。龍谷大学教授。博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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