内容説明
私たちの主体形成の過程において、社会的統制の暴力は、外側から一方的に行使されるのではなく、自分自身に「振り向くこと」、良心、自己叱責といった心的なものを通じて機能する。権力による「主体化=服従化」の過程を、フーコー、アルチュセール(権力理論)と、ヘーゲル、ニーチェ、フロイト(心的なものの理論)から徹底的に考察し、抵抗の契機を模索する。重要な訳語を再検討し改訂した新版。
目次
序論
第1章 頑固な愛着、身体の服従化―“不幸な意識”をめぐるヘーゲルを再読する
第2章 疚しい良心の回路―ニーチェとフロイト
第3章 服従化、抵抗、再意味化―フロイトとフーコーの間で
第4章 「良心は私たち皆を主体にする」―アルチュセールによる主体化=服従化
第5章 メランコリー的ジェンダー/拒否される同一化
第6章 精神の始原―メランコリー、両価性、怒り
著者等紹介
バトラー,ジュディス[バトラー,ジュディス] [Butler,Judith]
カリフォルニア大学バークレー校、修辞学・比較文学科教授
佐藤嘉幸[サトウヨシユキ]
京都大学大学院経済学研究科博士課程修了後、パリ第10大学大学院にて博士号(哲学)取得。現在、筑波大学人文社会系准教授
清水知子[シミズトモコ]
筑波大学大学院博士課程文芸・言語研究科修了。博士(文学)。現在、筑波大学人文社会系准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ラッシー
5
相変わらず難しくってよ…! けど、「先行研究で何が言われてなくて、その欠落についてこういうアプローチで考える」みたいな文構成の説明とかはめちゃくちゃはっきりしていて、ほかの本より幾分か読みやすい印象。主体化=服従化のプロセスを、心的=精神分析の視点から考えるのが主題。個人的に精神分析が好きじゃないので、「良心」等の鍵概念はわからずじまい。だけど、オースティンの言語行為論→パフォーマティビティ、アルチュセールの「振り向き」あたりの引き受け方が、かなりわかりやすく書かれていたので、個人的にはそこが収穫。2022/07/15
Yuki
1
アルチュセール・フーコーの主体形成理論と、フロイトの精神分析理論のアレゴリー的構造を接合する試みは、挑戦的でありながらも、ヘーゲリアンとしてのバトラーの緻密な読解・論理展開があるからこそ成立するものである。/他方で、精神分析理論からの「(予めの)排除」概念の導入は、同性愛的欲望が「先取りされた喪失」として前提とされてしまう。この点、フーコーが心的領野を詳述せず、精神分析を批判したのは、エディプス・コンプレックスにおけるジェンダー的同一化の機制が、SO/GIの既成化をもたらす脅威と捉えたためではなかろうか。2024/06/30
SAHARA
1
権力を内面化することで自我が構成される。2021/12/07