内容説明
水が低きへ流れるように、自然と芸人に「成り下がった」。昭和の名人・古今亭志ん生の長男・金原亭馬生に入門して四十五年。「落語家が最も尊敬する落語家」の呼び声高く、老若男女、あらゆる人物を繊細に演じ分ける狂気にも似た感性と圧倒的なテクニックは当代随一。若き日には、野坂昭如や色川武大など「本物」の贅沢と遊びを知る粋な大人たちに愛された、五街道雲助。雲のように、風の吹くまま気の向くまま、自由に姿を変えながら悠然と大空をただよう孤高の芸人が、「悪名」と生きた半生を綴る「成り下がり」一代記。
目次
第1章 成り下がりのススメ
第2章 そば屋の跡とり息子、芸人に成り下がる
第3章 前座はつらいよ!?―修行時代に見た、志ん生・馬生・志ん朝親子
第4章 もうひとりの師匠―わが青春の二ツ目時代―浅草・かいば屋、新宿ゴールデン街の人々
第5章 師匠もつらいよ!/―弟子から「師匠」へ。師匠から弟子たちへ
おわりに―芸歴四十五年を迎えて
著者等紹介
五街道雲助[ゴカイドウクモスケ]
1948年、墨田区本所生まれ。68年、明治大学商学部を中退し、十代目金原亭馬生に入門。前座名「金原亭駒七」。72年、二ツ目昇進「六代目五街道雲助」。80年、第一回真打昇進試験に合格し、81年、真打昇進。2009年、第552回三越落語会における『鰍澤』口演の成果により、文化庁芸術祭優秀賞受賞。一般社団法人落語協会所属(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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りつこ
13
雲助師匠の魅力がたっぷり。普段あまり語らない師匠なだけに、そうだったのか!だからそうなのか!とファンにはたまらない一冊。落語への向きあい方や師匠への想い、弟子への相対し方、高座を見ていてぼんやりといいなぁと感じていたところが、少しだけ明らかにったようで、嬉しい。志ん朝師匠との距離感も読んでみればなるほど納得で、そういう生々しい関係も含めて、落語って面白いと思う。なんかよくわからないけど素敵!好き!と感じていたけど、これを読んで自分が雲助師匠のどこに惹かれるのかとてもよくわかった。2013/09/27
maGyuI
9
面白かった。雲助師匠の来し方行く末、弟子達への思い。個人的には馬生、志ん朝、志ん生の話が読めてよかったかな。2015/01/25
qoop
9
雲助師の来し方をご本人の筆で読めるとは! 落語ファン歴の浅い自分にとって興味の尽きない話題が多く、しかもかなり本音に近い語り口だと感じさせる内容で、正直驚いた。これは芸歴45年を迎え、65歳という年齢を数えた今の師だからこそ、なのかも。二つ目時代のエピソード、志ん朝への思い、速記本からのネタ起こしや長講に対する姿勢など、師の高座を観る上で改めて注目したくなる点が多々できた。2013/09/26
gtn
7
文体も生き方もサラッと江戸前。十代目馬生門下は総じて好感が持てる。師匠の人柄は弟子に伝わる。2018/02/05
antonio
7
高座で自分を語るタイプの師匠ではないので謎の師匠のひとりだったけど、この本で生い立ちを知って少しそれが解けた。しかし最初に小さんに弟子入り志願に行ってたのは意外だった。あと圓生の落語は好みでないというのも。いずれにしても落語ファンにとって中々興味深い内容。2013/09/23